小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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ヘンなヤツ!

「かくして冥王星は降格された」
 ニール・ドグラース・タイソン
 吉田三知世 訳
  早川書房


♪もしもし冥王星よ 冥王星さんよ
  惑星のうちでおまえほど
   そんなにヘンなヤツはいない
  どうしてそんなにヘンなのか♪

2006年8月24日、国際天文学連合(IAU)の総会で冥王星は惑星から降格される事が決定された。
この前後にテレビでも取り上げられたので、覚えている人も多いだろう。

この本は「冥王星降格問題」の中心人物である(と見なされてしまった)著者による一連の騒動の記録である。

天文学者の間では、実はかなり前から冥王星の奇妙さについては話題が上がっていたのだ。
うろ覚えであるが、ジェイムズ・P・ホーガンの「ガニメデの優しい巨人」か「巨人たちの星」に冥王星の軌道の奇妙さについて議論するシーンがあったくらいである。
(冥王星の奇妙さについてはコチラ(「あすとろけいのHP」)が詳しい)

著者が長を勤めるニューヨークのヘイデン・プラネタリウムでは太陽系を紹介する際に太陽に近い順に並べるのではなく、性質の似たもの同士を紹介し、
あえて、冥王星を展示しなかった。
(ただし、後に「冥王星はどこ?」というパネルは展示し、問題提起は行っている)

この展示が公開された1年後、ニューヨークタイムズがこの展示に冥王星が無い事を「発見」し、「冥王星がないのは、ここニューヨークだけだ」という記事を掲載したことが
世界中を巻き込む論争のきっかけとなった。

ここで、とんでもない事実が判明してしまう。
「惑星とは何か、という(万人が納得する)定義は存在しない」
という事だ。
あまりに当たり前すぎて、誰も疑わなかったのだろう。


アメリカ人は冥王星に対して特別な感情を持っているらしい。
冥王星の降格に対して、感情的な反対の声が多かったのだ。

なぜなら冥王星はアメリカ人が発見した惑星であり、ミッキーマウスのペットのイヌの名前として「プルート」が使われているほど、アメリカ人にとって、なじみのある惑星だからだ。

アメリカ人にとっての冥王星がどれほどの重みがあるか分からないので、適切な例えかは不明だが、
「ドラえもんは、外国マンガのパクリ」
と言われる事に等しいのだろうか。


案の定と言うべきか、アメリカでは、理性的な対応からどこまでも頑固な対応まで様々だった。
面白いのは、多くの小学生からも著者宛てに手紙が来たが、最初のうちは、感情的な反対論であったが、次第に理由が浸透するにつれて、降格を支持する声が多くなってきたという。
(その裏で先生達の懸命な説明が想像できる)

対照的に大人の方は、頑ななまでに反対する意見が最後まで残った。
否決されたもののニューメキシコ州とカルフォルニア州の議会で「冥王星を惑星とする」という法案が提出された。

その法案の文面は巻末に補遺として掲載されているが、その理由が
「天文台がたくさんある」
「冥王星の発見者が長年住んでいた」
「75年間、惑星と見なされていた」
「探査機が飛んでいく」
「今まで惑星として教えていた」
「普遍定数の不安定性を憂慮する一部のカルフォルニア州民に今後精神的危害を及ぼす」
「教科書、博物館の展示の修正に莫大な費用がかかる」
「冥王星を降格することで、議会指導者たちが再分配法その他の不都合な政治改革手段を隠蔽するのに使える惑星の数が減少する」
などとあげられている。
これは「法案」ではなく「ギャグ」かと疑ったほどだ。

これではどちらが「大人」なのだろうか、と思うが、きっと日本も含め、その他の国でも程度の違いこそあれ、あまり変わらないのだろう。
(実際、日本でも天文台に「けしからん」と文句の電話をしてきた人が数多くいた、という)

いろいろな情報が手軽に入手できる現在でさえ、これほどの騒ぎになったのだから、ガリレオ裁判の時など、冥王星降格問題の比ではないほどの大騒ぎだったのだろう、と想像できる。

大騒ぎになった冥王星降格問題だが、本書の最後に紹介された1コママンガ「冥王星のつぶやき」が多くの事を物語っている。

「ニュース:冥王星は、もはや惑星ではありません・・・。
 冥王星 :だから何か?」
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