小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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北京の蝶は、ニューヨークの夢を見るか

カオスの紡ぐ夢の中で
 金子 邦彦
   早川書房


「複雑系」「カオス」という言葉だけは聞いた事がある人が多いと思う。
ただ、その意味するところを説明できる人は少ないだろう。実際、研究者の間でも意見が分かれていて、統一見解ができていないのだ。
(まさに「カオス」と言うべきか)

本の中の表現を借りれば、「カオスにおいては、決定論的な発展のルールがあるにも関わらず、一見、不規則としか思えず、確率的に取り扱うしかない事が起こる。そして、それは初期の小さな違いが急速に増える事に由来する」となる。

要するに、最初の状態を完璧に知っていれば未来を予測できるはず、と思われていたのだが、「最初の状態」を知る時の非常に小さな誤差があることによって、計算結果がまるで違ってきてしまうのだ。

よく使われる例えとして、
「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」」
というものがある。

表現に様々なバリエーションがあるが、チョウのはばたきほどの小さな事が、まるで違う場所の天気にまで影響する、ということで「バタフライ効果」などと呼ばれる。
これも言葉だけなら聞いた事がある人は多いだろう。

本書の前半は「カオス」または「科学」についての短いエッセイ集であり、後半は短編SFが2本(「カオス出門」「小説 進物史観」)で構成されている。
エッセイには、特に難しい数式などは出てこないので、この手のものにアレルギーのある人でも大丈夫だ。
短編SFについては、前提となる知識は特にない。単純にSFとして楽しめる作品になっている。

「カオス出門」は、とある学者が悪魔と「カオスを消す」という契約した・・・という話。
実際にカオスが身の回りのどのような現象に関わっているのかがよく分かる。

「小説 進物史観」は、人工知能による「物語の進化」を通じて複雑系を研究しようとする話である。
人工知能が生み出した作家の名前として「円城 塔」という名前がチラッと出てくるが、実際のSF作家である円城 塔氏は、大学院生時代、著者の研究室に所属していたそうだ。
その関係があるためか、本書の解説も円城 塔氏が書いている。

本書は1998年1月に刊行された本を加筆・修正したの文庫版であるが、内容は全く古さを感じない。
ただ、その事を「素晴らしい」と言ってしまうと著者は、喜ぶだろうか、嘆くだろうか?
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