小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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背中合わせに生きるものたち

「深海のYrr(イール)」
 フランク・シェッツィング 著
 北川 和代 訳
  ハヤカワ文庫


海を舞台とした世界的な災害とそれに立ち向かう人々を描いた海洋サスペンス小説。

ストーリーは、次の通り。

カナダ西岸でクジラやシャチの群れがホエールウォッチングの船を突然、襲い始める。
ほぼ同時期に世界各地では猛毒のクラゲが出現。
海難事故が続発し、フランスではロブスターに潜む病原体が猛威を振るう。

そして、ノルウェー海で発見された新種のゴカイは海底のメタンハイドレート層を掘り続けていた。
その行動の意味するところが分かった時、それは怖ろしい現象が起きる瞬間でもあった。

世界各地で続く海の異変。
まるで、「海」が突然、人類に復讐を始めたかのよう・・・。


「ドイツで記録的なベストセラー」という謳い文句は偽りなし。
次々と起こる事件、それに対応する人々の描写はたたみかけるようで飽きさせない。
大仕掛けの展開が続くあたり、ハリウッド好みだと思ったが、やはり映画化の企画はあるらしい。
(ただし、本書の初版は2008年。2011年の今になっても特に公開の情報も聞かない。立ち消えになってしまったのかもしれない)


ストーリーの展開は面白いが、不満な点もあった。

最終的な解決手段に少々えげつない手段を使っているのと、その方法が事件全体を収束させるには説明が苦しいと感じたこと。
「え!?それだけでこれまで起きた事がすべて解決に向かうのか?」と思ってしまった。要するに広げた大風呂敷のたたみ方に無理がある気がする。

悪口ばかり書いてしまったが、背中合わせに生きている目に見えない生き物達を忘れて驕る人類。むしろ彼らの方が「世界」そのものである、という点にはドキッとした。
一見、人間が「世界」を支配しているように見えるが、「世界」に与える影響の割合では人間に勝るとも劣らない。
こういう生き物達と共存しているのだ、とあらためて思い直した。


ところで、大災害を前に自らの権力を強化しようと画策する人物が出てくるが、つい最近、どこかで似たような風景を見たような気がする。

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