小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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雪の博士、研究日記

中谷宇吉郎 紀行集
 アラスカの氷河
  渡辺興亜 編
   岩波文庫



「雪は天から送られた手紙である」という言葉で有名な、雪の博士こと中谷宇吉郎。
その中谷博士がアメリカ、ハワイ、満州、アラスカなどを訪れた際の様子を記したもの。

今まで自分の中で、中谷博士は人工雪の研究では世界的に名が知られているものの、研究活動自体は日本国内でのみ行っていたとばかり思っていた。

が、本書の中での博士は世界を飛び回って、研究を行う颯爽とした姿を見せてくれる。
考えてみれば、最初のイメージは根拠なしである上、研究が世界的に知られているのであれば、あちこちから声がかかるので、世界各地を飛び回る事になるのは当然ではある。

本書は研究結果の報告や、研究過程の考え方などを述べたものでなく、日記なため、内容的に難しいものは少ない。

招待されてアメリカを訪れた時、講演のオマケで日本文化について述べる、と約束した事が、オマケの方が主題のように報道され、冷や汗をかいた話
があるかと思えば、
満州を訪問した時は、日本の満州開拓のあまりもの準備不足ぶりを批判したりなど、内容は幅広い。

読んでいて、博士が一番、楽しそうに描いているのは、やはり研究をしている時の様子。
その時の様子が目に映るようだった。

印象的だったのは、「地球温暖化」という言葉がない頃から、その事について、うすうす気が付いているフシがあった、という点。
雪の博士の面目躍如、といったところだろうか。

ただ「温暖化」については、未だに大した対応策を考えつけない自分達、「温暖化」自体を認めていない人々などを中谷博士が見たら、何と言うだろう・・・。
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この師匠にして、この弟子あり

中谷宇吉郎随筆集
 樋口敬二 編
  岩波文庫



雪の研究と「雪は天から送られた手紙である」という言葉で有名な著者の随筆集。

大きく分けて
・雪の研究に関する話(こぼれ話的なもの)
・趣味・日常の話
・寺田寅彦(著者の師にあたる人物)の思い出
・科学随筆
から成る。

著者の師匠にあたる寺田寅彦はユニークな発想を持つ物理学者でありながら、随筆の名手としての顔も持っていた。

寺田寅彦は夏目漱石に俳句を習っていた、という経歴の持ち主。
「我輩は猫である」にいつも妙な実験をしている物理学者、水島寒月という人物が登場するが、この人物のモデルこそ寺田寅彦だと言われている。

師匠が自分の専門以外にも俳句をたしなんでいたように、弟子の著者も南画(水墨画のようなもの)を趣味としていたり、科学随筆を書いたりして、正に「この師匠にして、この弟子あり」という感じがする。
(南画を書く事についての随筆も収録されている)

本書の中、師の思い出についての随筆の中で「茶碗の湯」という師匠の有名な科学随筆に触れ、その内容を絶賛しているが、著者自身の科学随筆もかなり面白い。
特に印象に残ったのは「地球の丸い話」「千里眼その他」「立春の卵」の3本。
「地球の丸い話」は観測の精度についての話、残り2本はタイトルから想像がつくかもしれないが、ある種の「熱病」についての話で、現在も(おそらく将来も)同じような話には事欠かないだろう。


冒頭に挙げた「雪は天から送られた手紙である」という言葉。

最初は雪を詩的に例えたものとばかり思っていた。
が、「雪」(本書とは別の著作)を読むと、文字通りの「手紙」という意味で使っている事が分かる。

それによると、雪の結晶の形は上空の気温によって変わってくるらしい。
そのため、雪の結晶の形を調べることで上空の気象状態が分かるので「手紙」と言っていたのだ。

師匠の寺田寅彦も知り合いの地質学者を訪れた時、「石ころ一つにも地球創世の秘密が記されている。我々は、その"文字"を読む術を知らないのだ」という旨のことを言ったのが、随筆に残っている。
また「茶碗の湯」では茶碗から立ち上る湯気をダシに気象現象などを子供向けに解説している。

身近な現象の中にこそ、大きな自然の謎を解くカギがある。
しかも自然は、その謎を隠しているわけではなく、常に語りかけているのに人間の方がその言葉を理解することができないでいる、という考え。

そんな師匠の影響を受けたからこそ、「雪は天から送られた手紙である」という言葉に繋がったのだろう。
惜しむらくは、あまりにキレイにまとまりすぎたため、自分のような勘違いをする事がありえる、という点か・・・。

ちなみに、マイケル・ファラデー(電気分解の法則や電磁誘導の法則で名を残す)は「ロウソクの科学」で1本のロウソクが燃える現象をダシに子供向けに化学を解説している。
もし寺田寅彦や中谷宇吉郎がファラデーと会ったら、かなり話が盛り上がることだろう。

「一は全、全は一」
というのは「鋼の錬金術師」(荒川弘)で出てきた考え方だが(どうやら一神教にもそのような考え方があるらしいが)「一」から「全」を想像するのは、かなり難しそうだ。

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