小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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「普通」の鳥の「普通でない」生態

スズメ
 つかず・はなれず・二千年
  三上 修
   岩波書店


鳥に詳しくない人でも、すぐに名前と姿が思い浮かぶであろうスズメ。
本書の裏表紙では「ザ・普通の鳥」と書かれている。
なお、本書は、とりのなん子(「とりぱん」)氏のイラスト付き。

あまりに身近すぎるため、特徴を挙げろ、と言われるとすぐには出てこない。
頬に黒い斑点があり、喉の部分にも黒い羽毛がある、という点は自分が鳥見をするようになってから気が付いたくらいだ。

日本で見られるスズメは2種類
スズメとニュウナイスズメ。

普通に見られるのは前者のスズメ。
ニュウナイスズメは森林にいる鳥なので、めったに見る事はない。

ヨーロッパで一般的に見られるのはイエスズメ。
頬の黒斑がなく、頭に灰色の帽子をかぶっている。
クレア・キップス(梨木香歩 訳)の「ある小さなスズメの記録」の主人公は、このイエスズメ。

ちなみに「入内雀(にゅうないすずめ)」は、鳥山石燕の妖怪画集「今昔画図続百鬼」に妖怪として紹介されている。
東北に左遷させられ、そのまま亡くなった藤原実方の怨みがスズメの姿となって、内裏の食べ物を食い荒らしたりした、という話から「内裏に侵入するスズメ」で「入内雀」になったらしい。

藤原実方の怨みの話があって、実在のニュウナイスズメと結びついたのか、その逆なのかは不明。

スティーヴン・キングの「ダーク・ハーフ」では、スズメ(の大群)は"死にきれぬ死者を、あの世へ運ぶ者"の役割を持って登場する。
ただし、こちらはキングの創作なのか、元々、言い伝え等があったのかはよく分からない。

意外に怖い面も・・・。
もっとも、スズメだけでなく鳥全般は、空を飛べる事から、あの世とこの世を自在に行き来できる、と考えられていたらしい。

閑話休題

スズメが登場する話としては「舌切りスズメ」が有名。
・・・というより知らない人はいないだろう。

さらに、古事記や枕草子にもスズメは登場するらしい。

小林一茶の
「我と来て遊べや親のない雀」
「雀の子そこのけそこのけお馬が通る」
は一度は聞いた事があるだろう。
スズメへの愛情がひしひしと伝わってくる。

俳句の季語にも「孕み雀」「雀の巣」「稲雀」「寒雀」があったりする。

面白いのは「雀蛤(はまぐり)となる」という季語もあるそうだ。
時期的には10月初めを指す季語。
これは秋になるとスズメが農耕地に移動していなくなるので、模様が似ている蛤になったと言われているらしい。

さらに「竹に雀」は伊達家の家紋。

農家の人にとっては、スズメは厄介者でしかないだろうが、日本人は昔からスズメ好きだった、と思われる。


ところで、よく考えてみるとスズメには不思議な生態がある。

なにより、野鳥のくせに人間に近すぎるのだ。
スズメにしてみれば何も好き好んで人間の傍で暮らしている訳ではなく、外敵から身を守るために人間の傍で暮らしているのだろうが・・・。
ツバメも人家に巣を作ったりするが、渡り鳥で限られた期間しかいないせいか、スズメほど人間に近くない気がする。
本書のサブタイトルは「つかず・はなれず・二千年」となっているが、正にそんな感じだ。

過疎化で人が住まなくなると、いつの間にかスズメもいなくなる、という。
高速道でも人がいる料金所にはスズメがいるが、スマートETCにはスズメがいないらしい。

また、スズメは他の鳥と比べると、とてつもないほど高密度で繁殖する。
スズメ以外の鳥では(大抵だが)一定の縄張りを持つが、スズメは「アパート」状態で巣を作る。
ただ、それを言ったら、ツバメも時々、「アパート」状態で巣を作る様子が、テレビで紹介されるが・・・。

さらに、スズメは卵を産む時、最後の卵だけ殻の色が違うらしい。
これが何を意味するのかは不明。

スズメの言葉が分かるのなら、聞いてみたい。

少し不気味なのは、スズメの数が減っている事。
仮定を含むが、ここ20年間で20~50%減っていると考えられるそうだ。

しかも、今のところ、その原因は不明。
良くも悪くも人間と共存していたスズメ。

人間と背中合わせに生きるスズメ(とその他多くの生き物)が、ある時、突然いなくなったら、人間も支えを失って、後ろにひっくり返ってしまうだろう。
そんな日が来ない事を祈りたい。
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