小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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やなせたかし、戦争体験を語る

ぼくは戦争は大きらい
 やなせたかし
  小学館


「アンパンマン」の作者、やなせたかし氏への戦争体験についてのインタビュー。

著者は、偶然の巡り会わせから、激戦地には行かずに済む。
当初、国内での任務についたが、後、中国の福州へ。
その後、さらに上海に向かうが、その上海で終戦を迎える。

その間、大きな戦闘もほとんど経験する事なく済んでいる。
そのためなのか、「南京時間は無かったと信じている」という言葉も飛び出す。
(この一行だけの記述だったが)

だが、それでも
「ぼくは戦争がきらいだから、早く忘れたかったんです。なかった事にしたかった。」
と語っている。

軍隊に入り、待ち構えていたのは「古参兵によるいじめ」

また、使う装備は旧式。
それをごまかすために「我々には大和魂がある」という、意味不明の精神論を語りだす上層部。

この事だけでも、「お先真っ暗」という気持ちになったという。

著者が直面したのは「戦場の残酷さ」よりも、「日本軍の暗部」の方。
先にあげた、意味不明の精神論に加え、略奪した物資を勝手に自分の荷物として、日本に送る参謀がいたりなど・・・。

そして、終戦により故郷に帰って聞いたのは「弟の死」
また伯父も激戦地フィリピンから生還していたが、がりがりに痩せていた、という。

その運命を分けたのは、単なる「偶然」
偶然の巡り合わせ一つで、こうまで運命が変わってしまうものなのか。

ところで本書で、一番、言いたいと思っていた事は、「おしまいに」に書いてある部分だと思う。

「なんだか、このところ世の中全体が嫌なものはみんなやっつけてしまおう、というおかしな風潮になっているような気がしてなりません。」
この事は自分もなんとなく感じていた。
強いて付け加えるなら、
「相手の言い分を聞く事なく(聞いたフリも含む)」
ということ。

そして「やっつけてしまうおう」と一番大声で叫んでいる人は、実際に嫌なものをやっつける事になったら、決して先頭には出てこない。

だが、だからと言って、相手(「やっつけてしまおう」と叫んでいる人)を排除してもいけないのだろう。
そうしたら、やっていることは一緒だ。

だからこそ、著者は、こう語る。
「嫌な相手ともなんとかして一緒に生きていくことをかんがえなければならないのだと思います。」
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チリンの鈴で思い出す

チリンのすず
 やなせ・たかし
  フレーベル館


「アンパンマン」の作者、やなせ・たかし氏による絵本。
同氏の「わたしが正義について語るなら」(ポプラ新書)の中で、本書の事が語られて(ほぼネタバレだが)いたので、気になり、実際に読んでみたくなった。

主人公は子羊のチリン。
母親と平和に暮らしていたが、ある夜、牧場が狼のウォーに襲われ、チリン以外は全員、死んでしまう。
生き残ったチリンは、ウォーの下に行き、こんな事を言い始めた。
「僕もあなたのような強い狼になりたい。僕をあなたの弟子にして下さい。」

羊が狼になれるわけはないが、チリンには狙いがあった。
「ウォーより強くなって、母親の仇を討つ」
という狙いが・・・。

子供向けの絵本ではあるが、単純な勧善懲悪モノではない。
「悪人(狼)」であっても、暖かい心もあるし、「正義」と「悪」が逆転する事もある。
単純に分ける事などできない、といった内容。

子供向けとは思えない程、重いテーマを扱っている。

初期のウルトラシリーズで、時々、ビックリする程、重いテーマを扱っていた、という事を思い出させる。
作り手側は「今は分からなくてもいいから、こういう問題がある、という事を見せておきたい」という想いから、そのようなエピソードを作ったらしい。

本書も同じような想いから作られたのだろう。

奥付を見ると、初版が1978年に出版され、25刷を重ねている。
作者の想いが伝わったかは、この事実だけで明確だろう。

ところで、考えすぎかもしれないが、本書のストーリーの構成で気が付いた事が一つ。

本書の冒頭
「チリンの鈴で思い出す。
 やさしいまつげを
 微笑を

 チリンの鈴で思い出す。
 この世の寂しさ また悲しみ」
とある。
(これだけでも、その内容に「本当に子供向け!?」と思ってしまった。)

最後まで読むと、ラストに出てくる「鈴の音」が、この冒頭の「チリンの鈴」と繋がっている事に気が付く。
おそらく本書はラストシーンから始まる物語なのだろう。

アンパンマンと「正義」の話をしよう

わたしが正義について語るなら
 やなせたかし
  ポプラ新書


「やなせたかし」と聞くと、これまで「アンパンマン」の作者という認識しかなかった。
その訃報を聞いた時に、「アンパンマン」に込められた想いも紹介されて、少し気になっていたので、思わず購入。

やなせたかし氏が自身の考える「正義」について語るもの。
また、同時に全体の半分ほどのページを割いて、自身の人生を語っている。

著者の考える正義は「飢えている人に一切れのパンを差し出す事」
まさに「アンパンマン」が行っていた行為。

そして、こうも語る。
「正義というのはあやふやなもので、ある日、突然逆転する。」
「正義のための戦いなんて、どこにもない。」
「正義は勝ったと言って、いばっている奴は嘘くさい。」

世界のリーダーを自認する国や、口先だけの「反省」を言う政治家に聞かせてやりたい。

ただ、著者は「悪人」に対しても、優しい目を向ける。
「悪人であっても正義感や優しい心はある。善人にも悪い心はある。ただ、分量の問題にすぎない。」

言われてみれば、その通りだと思うのだが、ひどい事件のニュースなどを見た時など、すっかり忘れている事が多い。

全体として、著者の語る「正義」は、戦争に行って、苦労した人でないと言えないものだと思う。
・・・というより戦争で兵役についた事がある人が語るからこその重みのある話だという気がする。

最近、「世界の平和に貢献するため、血を流す事も・・・」と言う政治家や、その支持者がいたりするが、軽々しく語って欲しくない。

「正義を行う場合には、本人も傷つくという事を、ある程度覚悟しないとできない。」
自分自身も傷つく覚悟があって、語っている人はどれほどいるだろうか?

こういった事だけでなく、正しいと思って行った事が、仲間、もしくは自身の属する組織の不利益になるとしたら?
自分が傷つく事になったとしても、行動に移せるだろうか、それとも長いモノに巻かれる道を選ぶだろうか。

企業の不祥事としてニュースになるのは後者の道を選んだ場合、そうなる、というのは分かるが・・・。

こんな事を考えていると、見透かしたかのように著者はアドバイスをしてくれる。
「自分なりに戦えばいい」と。

それが、どんな方法なのかは分からないが、こう言ってくれると、なんだかできそうに思えてくるから不思議。
著者の思う壺にハマッているだけかもしれないが・・・。

本書の最後は「アンパンマンのマーチ」の歌詞で締めくくられる。
結局、著者の考える「正義」は、この歌詞の中に凝縮されているそうだ。

あらためて歌詞を見てみると、本書で語っていた事が全て込められている。
子供向け番組の主題歌、ということで、今まで軽く見ていたのが恥ずかしいくらい。

初期のウルトラマンのシリーズでも、製作者達は「今は分からなくてもいい。将来、大きくなって思い返した時に気付いてくれればいい」という思いで、重いテーマも盛り込んでいたそうだが、「アンパンマン」も同じだったとは知らなかった。
子供の頃に見たアニメなどの主題歌は大人になっても、結構、覚えていたりするので、主題歌にメッセージを込める、というのは、かなり有効な手段かもしれない。

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