小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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懺悔

ウルトラマンが泣いている
 円谷英明
  講談社現代新書


ウルトラマンのストーリーではなく、円谷プロの経営者としての視点からウルトラマンシリーズを振り返ったもの。
ただし、「自慢話」ではなく、「懺悔録」である。

なぜなら、現在、円谷プロと円谷一族は、一切関係がないから。
円谷英二(著者の祖父)氏が創設しながら、その子や孫たちは、円谷プロの経営を全うできなかったのだ。

その原因は、本書でもいろいろ挙げている。
曰く、円谷英二自身は「特撮の神様」と呼ばれる"技術者"ではあったが、"経営者"ではなかった。
曰く、特撮自体、普通のドラマよりお金がかかるので、赤字体質だった。
(ヒーロー、怪獣、それらが動きまわる舞台セットが必要なのはもちろん、破壊シーンでNGを出すと、セットの作り直しになってしまう等)
曰く、筆頭株主である東宝が人が育つ前に大規模なリストラをしてしまった。
曰く、円谷英二、円谷一(2代目社長)が相次いで亡くなってしまったため、経営側の人が育たなかった。
曰く、会社の経理が雑すぎる。
・・・などなど。

これらの理由は間違いではないと思うが、その根底には
「ウルトラマンと、そのファンを大切にしなかった」
という事があるのではないだろうか?

現場の人はともかく、著者も含めた経営者側にウルトラマンと、そのファンに対する「愛」が足りなかったからではないか、と感じる。
ウルトラマンを使って、どのように商売を拡げていくか、という事を考えたという記述はあるが、ウルトラマンの作品そのものについては、ほとんど語られていないからだ。
(当然、「どのように商売を拡げるか」も重要ではあるが)

その辺り、反省が足りていないのではないか、という気がする。
ただ、自らの失敗を認めた上で、本にまとめる、という事自体が貴重な事だと思うので、踏み込み不足のような感じがあるのは止むを得ないだろう。

ところで、ウルトラマンの監督の一人であった実相寺昭雄氏の本で、円谷英二氏の足跡を辿る一節があった。
その中で、円谷英二氏と一緒に特撮映画を作った人は、口を揃えて、こう語っていた。
「(円谷英二氏の死と供に)日本の特撮は死んじまった」
と・・・。

もしかしたら、その言葉は「天才の喪失」を嘆いているだけではなく、後を継ぐ人達が育たないうちにバラバラにされてしまった、という悔しさも含まれていたのかもしれない。
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