小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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別れは、ある日、突然に

さよならペンギン
 大西 科学  ハヤカワ文庫


塾講師の主人公、南部観一郎。
彼は「観測者」であり、1500年以上生きる存在である。

なぜ「観測者」になったのか、という事は分からない。
物語中では、確率は低いが、誰でも「観測者」になり得て、
それがたまたま南部だった、と説明される。

そして、どのようにして1500年以上も生きてきたのか、というと自分
が生きている世界を観測し続けているから。

だが、南部は、あくまで「観測者」であり、自分の望む世界を選択する
ことはできない。どれほど一緒に過ごしたい人がいたとしても「その人
と永遠に一緒にいられる世界」というのは、自分の意思では選ぶことが
できないのだ。

自分は年を取る事はないが、愛する者達は、いずれ年老いたり、事故や
病気でいなくなってしまう・・・
絶望的なまでの孤独。

ただし、唯一の例外は、ペンダン、という存在。
「延長体」と呼んでいるが、その正体は不明。
南部が暮らす部屋では、ペンギンの姿をしているが、外を歩くときは、
5歳くらいの少女の姿になる。他のものにも姿を変えられるが、それは
ここでは伏せておく。

人間でない事は明らかだが、なぜ南部についてくるのか、何が目的なのか、
ペンダン自身も分かっていないような言動を繰り返す。


孤独な南部の願いは「自分の同類を探すこと」
「観測者」は自分一人かもしれないが、他の「観測者」の存在を否定する
ものは何もない。

ただ、探すと言っても、あてもない。
人が大勢いる所をあてずっぽうに歩くだけだ。
今日も無駄足になるかもしれない、と思いつつ、繁華街を彷徨うが、
ペンダンが襲われる、という事件が起きる。
ついに見つけた同類のようだが・・・

本書の冒頭にもあるが、これは「別れ」の物語である。
塾講師のため、生徒との触れ合いのシーンは、学園物を読んでいるような気にも
させられる。
そして、そういうシーンがあるからこそ、南部の孤独が一層、浮き彫りになる。

いくら親しくなっても、いずれ別れなければならない、というのは普通の人も同じ。
だが、南部の場合、「観測者」であるため、いつまでたっても年を取らない。
周囲の人から怪しまれてしまう前に去らなければならないのだ。

裏表紙にある言葉が印象的だった。
「哀愁の量子ペンギンSF」
哀しくもユーモラスな話であった。
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