小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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自然の中に生きるもの

「オホーツク老人」
  戸川 幸夫
  (ランダムハウス講談社文庫)


厳しい自然の中に生きる人間、動物と人間や動物達の生き様をテーマに
した10の短編からなる。

表題作の「オホーツク老人」は、海が荒れるため漁のできない冬の間、
漁師達は知床半島を去るが、漁業用の網などをネズミの害から守るために
留守番役として残る老人の物語。

「地の涯に生きるもの」というタイトルで映画化され、知床半島の名を
全国区にしたと言われる。

主人公の彦市は、一時は数隻の船を持つ身分だったが、オホーツクの海に
息子を奪われ、妻にも先立たれてしまう。
年をとり、漁に出ることもできなくなったが、それでも海から離れた暮らし
を知らないために、どんな形であっても海に関わっていたい、と願い、
あまりやりたがる人のいない、留守番役を引き受ける。

人間が去った後の知床半島は自然の厳しさをむき出しにしていく。
元々、人間の近くで暮らしていたカラスやネズミは飢えのため、凶暴になり、
海からは、アザラシなどの海獣が上陸してくる。

留守番役の同僚として飼われている猫はもちろん、これらの獣たちでさえ、
彦市の孤独を紛らわす、かけがえのない存在となる。

おそらく子供の頃からこういう環境に慣れていないと1日としてもたない
だろう。自分だったら、半日ももたない自信がある。

よそ者にとっては「秘境」「雄大な自然」「厳しい自然」であっても
そこに住む人にとっては「日常」だ、という意味のことが序文にあるが、
それがかなり印象的。


他のエピソードでは、犬に関わる話が多いが、それは著者の好みらしい。
今まで闘犬についての物語は読んだことはないが、試合のシーンには
ついつい引き込まれてしまった。

動物が主人公であっても、過度に擬人化しないという点や、人間の基準
(主に道徳)を動物に押し付けない、という点が、非常に自分の好みだと
と感じた。

少し前に読んだ「シートン動物記」を彷彿とさせる。
この著者の他の作品も気になるものとなった。
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