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流されるのは楽だけど・・・ 

「魔王」 伊坂幸太郎(講談社文庫)


景気がよくなりそう、と思われた途端、水をかけるような事件が立て続けにおこり、「やっぱりダメなんだ」という雰囲気になっている、というのがこの作品の背景。

小政党の党首、犬養は、多くの人が理想的と考える政治家の姿そのもの。
そして、犬養の語る言葉は、多くの人を感動させる。
おりしも外交面では、大国との軋轢がおこり、右翼的な考えが幅をきかせてくるようになる。

そんな中、平凡な会社員である安藤は、自分に「腹話術」という能力があることに気が付く。

「外国は敵だ」というムードが高まる中、犬養に期待が集まるようになり、犬養は、それを利用しようとしている節がある。

そんな世間の流れに危惧を抱いた安藤は、自分の「腹話術」で犬養と対決することを決心する。

犬養という政治家は、この話の中で、「ヒトラー」や「ムッソリーニ」にたとえられたりするシーンもありますが、実際に”理想的な政治家”なのか、”独裁者”なのかは、はっきり描かれていません。

最初は、この犬養が「魔王」ということなのかと思いましたが、実際は違いました。

「魔王」は、「イメージとムード」のこと。
その場のムードが変な方向に向くと、(集団心理もはたらいて)普段ならやらないようなことまで、やってしまう。
そして、そのムードの方向性を決めるのは、多くのひとが共有するイメージ。

イメージがムードを作り出して、ムードが集団を暴走させる。そうなってしまうと、もはや止められない。

この流れに流されるのは、簡単ですが、それでいいのでしょうか?
気が付いたら、とんでもない所にいた、なんてことになりそうです。

この本には「魔王」と一緒に、その5年後を描いた「呼吸」も収録されています。
その「呼吸」の中で出てきたセリフ。
「大きな洪水は止められなくても、でもその中でも大事なことは忘れない」
こうありたい、と思います。
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カテゴリ: 伊坂幸太郎

テーマ: 感想 - ジャンル: 本・雑誌

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