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患者達の「物語」 

妻を帽子とまちがえた男
  オリバー・サックス  早川書房



著者のオリバー・サックスは神経学者である。

1990年に公開された映画「レナードの朝」の原作者、
と言えば分かる人もいるだろう。
自分もこの映画で著者の名を知り、そのつながりで
本書を知った。
本書や「レナードの朝」(原作)以外にも「火星の
人類学者」など多数、出版している。

タイトルの「妻を帽子とまちがえた男」というのは、
比喩としての表現ではない。
著者が出会った患者の中に実際にそのような患者が
いたのである。

だがその患者は病院に入院などしていない。
普通に音楽教師として働いていたのである。
「人の顔」「手袋」「バラの花」などのモノを見せても、
それが何か認識できないだけだったのである。

(ちなみに「人の顔」は認識できないが、相手が動いたり
 すると独特のクセがあるらしく、すぐ誰か、という事が
 分かるらしい。
 また、バラの場合は、匂いをかがせてみると「バラ」
 ということが分かった、という)

そういう事がある点以外では健常者と全く変わらなかった
そうである。


この本には、神経の機能が一部、壊れてしまったために
「奇妙」としか言えない状態になった患者たちが紹介
されている。

症状のために苦しんでいる者もいれば、うまく折り合い
をつける者、症状の存在さえ自覚できない者もいる。

著者は、そんな患者達の「症状」だけに注目するので
はなく、「人間」として理解しようとする。

ある面では「異常」だが、別の面では、「すぐれた」
能力を持っている、というケースを数多く、目の当たり
にし、「異常」な面ばかりに注目し、「すぐれた」
部分を犠牲にしてしまうような治療に疑問を持った
からである。

ただし、その「すぐれた」部分は、病院での検査など
では、まず分からないし、時間もかかる。
(残念ながら、様々な事情で途中までしか、経過が
 語れない患者も出てくる)

本書は著者が患者一人一人と向き合って作り上げた
「人間としての物語」を集めたものである。
行間から、著者の人柄がにじみ出てくるような印象を
受ける本であった。
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カテゴリ: オリバー・サックス

テーマ: 読書感想 - ジャンル: 本・雑誌

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