小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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行きて帰りし物語

「はやぶさの大冒険」
   山根 一眞 マガジンハウス


2010年 6月13日、午後10時51分、「はやぶさ」と「カプセル」は大気圏
に突入、「カプセル」はオーストラリアのウーメラ砂漠に着地した。

それまで、あまり報道されなかったが、このニュース以後、「はやぶさ」
は人気を集め、相模原や東京での「カプセル」などの展示イベントには
長蛇の列ができた、というニュースが報道された。

ちなみに自分も東京(丸の内)での展示に行きたい、と思っていたが、
相模原のニュースを見て、あまりの大人数のため、行く気がなくなった。
(数年後、国立科学館などで、常設展示される事を期待して)

「はやぶさ」がすごい所は、のイオンエンジンをメインの推進装置
とした点。

イオンエンジンというのは、人が息を吹き出すほどの力しか得られない
代わりに、他と比較して、燃費が桁違いに良いエンジンである。
これまで、補助用としては様々な人工衛星に採用されているが、これを
メインとしたのは「はやぶさ」が世界初である。

また、燃費がいい代わりに瞬発力のないイオンエンジンで「地球スイング
バイ」を成功させたのである。
「地球スイングバイ」がどれほど難しいかというと、東京駅から横浜駅
に置いてある的の中心1センチ以内を通り抜けさせるほどの精密さが
要求される。

そして「イトカワ」のサンプルが得られていた場合、月以外のサンプル
を初めて手にすることができる。


この本は「はやぶさ」の打上げから「カプセル」の帰還までの記録である。

本の中に帰還までの主な出来事を年表にまとめた資料があるので、そこから
主なものを抜粋してみると次のようになる。

2003/05/09 打上げ

2003/05/27 4基のイオンエンジンのうちの1台が不調となり運転停止

2004/05/19 地球スイングバイに成功
      (イオンエンジンをメインにした探査機では世界初)

2005/08/15 3基のリアクションホイール(姿勢
     制御装置)のうち、1基が故障


2005/09/12 「イトカワ」到着

2005/10/04 「イトカワ」を前にして、リアクションホイールが
     さらに1基故障。

     →「化学推進エンジン」を姿勢制御に用いる、という方法で解決!

2005/11/12 「イトカワ」へ超小型探査ロボット「ミネルバ」投下
     →着地失敗。「ミネルバ」は宇宙の彼方に消える。

2005/11/20 「イトカワ」へ1回目のタッチダウン決行!
     →タッチダウン後、「はやぶさ」の状況が不明になる。

2005/11/23 1回目は「タッチダウン」ではなく「着陸」
      していたことが判明
     →「イトカワ」の日光が当たる部分は、100度にもなるため、
      機器への影響が心配される

2005/11/26 2回目のタッチダウン決行
     →化学推進エンジンの燃料漏れ発生。
      凍った燃料でバルブが動作しない、と考えられた。
     →電力系も影響を受け、リチウムイオン電池への充電が停止し、
      ほぼカラになる

2005/12/03 ソーラーパネルが太陽の方向からずれ、
     地球を向いていなければならない
     アンテナもおおきくずれていることが判明。

      姿勢を安定させるための「はやぶさ」本体の回転もどんどん
      落ちている。
      (皮肉にも燃料漏れは回転にブレーキをかける向きに漏れている)
     →「化学推進エンジン」は燃料漏れで使用できず、イオンエンジン
      ではパワーが小さく間に合わない。

2005/12/04 イオンエンジンの推進剤である「キセノン」をそのまま噴射し、
      姿勢制御を行う。
     →通信回復後、データを調べるとサンプル採取のための弾丸が発射
      されていなかったことが判明

2005/12/08 探査機全体を暖める「ベーキング」を実施。
      が、大量の化学推進エンジン燃料の燃料
    漏れが発生。

      「はやぶさ」からの通信途絶。行方不明。
      絶体絶命

(1日、6時間ずつ「はやぶさ」に信号を送信)

2006/01/23 「はやぶさ」からの信号の受信に成功

2006/01/26 地球との通信回復

2006/03/06 「はやぶさ」の位置と速度を正確に特定。

2007/02   イオンエンジン再点火。太陽光圧による姿勢制御を行う。
     →4基中2基は不調のため停止。残り2基のうち1基もかなり
      へばっているため、それぞれ1基だけ残っているイオンエンジン
      とリアクションホイールで巡航運転開始。

2009/11/09 運転中の1基のイオンエンジンが自動停止。
    復旧不能。

     →イオンエンジンが完全に停止
      また絶体絶命

2009/11/19 不調のために停止しているイオンエンジン2基の正常な部分を
      つないで1基のエンジンとして使う「クロス運転」に成功。

2010/06/10 イオンエンジン運用終了

2010/06/13 「はやぶさ」と「カプセル」が大気圏に突入。
      「カプセル」は、オーストラリアのウーメラ砂漠に着地

かなり波乱万丈の旅である。

致命的な故障が発生しても、決してあきらめず裏ワザとも呼べる方法を
編み出し、切り抜ける。
運用チームの人達の精神力は、まさに「不屈」としか言いようがない。

「はやぶさ」は当初、カプセルだけ地球に投下し、本体は、また宇宙で
いくつかの機器の実証試験を行う予定であったそうだ。

ただし、それも化学推進エンジンの燃料が残っていればの話。

それでも何とか「はやぶさ」を大気圏に突入させないで済む方法を探ったが
どうしてもムリであったらしい。

個人的に一番、印象に残ったのは「カプセル」切り離し後、「はやぶさ」が
最後に撮影した地球の写真。
「カプセル」を切り離した後は、本来、本体の運用はしないでもよいのだが、
誰も止めようとしなかったらしい。
最後に地球の姿を見せてやろう、という気持ちから、地球の写真を撮った
のだが、その写真の下の部分(全体の3分の1)が欠けているのは、そこで
大気圏に突入してしまったらしい。

まさに最後の仕事だったのだ。

「はやぶさ」が大気圏に突入した時、予想以上の明るさで燃え尽きたが、
それは、イオンエンジンの燃料がまだかなり残っていたためだったらしい。

7年間の厳しい旅の終わりを華やかに飾るためだったのだろうか。
最後の最後まで「魅せてくれる」探査機だった。
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