「算数宇宙の冒険
アリスメトリック!」
川端 裕人 実業之日本社社会人になって、数学と直接的に関わりを持たなくなってから、一般向けの数学の解説書を時々、読むようになった。
内容が理解できず玉砕することもあったが、それでも懲りずに何度か読んでいる。
今回は、出てくる数式は難しいが、どうにかついていけた、という感じだった。
<あらすじ>
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主人公は小学6年生の千葉空良(そら)。
同級生の河邑ユーキ、紺野アラン、そして謎めいた転校生、一之瀬那由と「算数宇宙杯」と呼ばれる競技に参加する事になる。
ちょっと大げさな名前の数学オリンピックのようなもの、と思われていたが、実際にはもっと大きな意味のあるものだった。
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素数。
1とその数自身以外に正の約数がない、1より大きな自然数。
中学の頃、習った覚えがあるが、何のためにこんなものが考え出されたのか、さっぱり分からなかった。
ただ機械的に計算問題を解いていただけのような気がする。
だが、素数について知れば知るほど面白い事が分かってくるのだ。
今の教科書が素数をどのように教えているのか知らないが、そのさわりだけでも紹介してくれれば、興味が持てるのに、と思うのだが、今更、言ったところで、言い訳にしかならない。
この本では、難しい数式も出てくるので、数学に嫌な思い出のある人は、それだけで敬遠してしまうかもしれないが、特に数式が分からなくても話が追えなくなることはない。
主人公は数式が分からなくても「鑑賞」する事を求められるが、読み手も同じスタンスでいれば、大丈夫だ。
設定上、主人公以外の3人は、天才的な数学センスの持ち主、という事になっているので、解説は、その3人のうちの誰かがやってくれる。
「この式は何を意味しているのか」という事が分かれば、十分なのだ。(この本の中では、その事を「鑑賞」と読んでいる)
ただ「SF小説」として見ると、話自体はありふれた印象を受ける。
特に感情移入ができる登場人物や、魅力的な登場人物もほとんどいなかった。
唯一の例外が主人公の祖父。
寿司職人、という事なので、セリフも威勢が良くてカッコいいし、幻の味を追い求めている姿が眩しかった。
それに相手が小学生でも正面から向き合っているナイスな爺さんだ。
ただ、つまらない本か、というとそういう訳でもない。
素数の性質についての話は、非常に面白い。学校で教える時に、なぜ、こんなに面白い事に触れないのかと不思議に思う。
専門の研究者以外にも、世には「素数ファン」なる人がいるらしいが、その人達の気持ちが分かるような気がする。
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