小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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1羽のスズメにも5分の魂

「ある小さなスズメの記録
   人を慰め、愛し、叱った、
     誇り高きクラレンスの生涯」

 クレア・キップス(著)
 梨木香歩(訳)       文藝春秋


第二次世界大戦中のロンドン郊外で、丸裸で目も見えていない生まれたばかりのスズメのヒナが著者に拾われる。

夫人は、ヒナを毛布でくるみ、暖かいミルクを与えたが、内心、翌日までもたないだろうと考えていた。
が、ヒナは奇跡的に回復。それはスズメとキップス夫人の12年間にも及ぶ同居生活の始まりでもあった。

この話の主人公であるスズメのクラレンスは、日本のスズメとは異なるイエスズメという種類のスズメである。

イエスズメは頭に灰色の帽子をかぶり、頬の黒斑はない。頬の黒斑がない点では、ニュウナイスズメも一緒だが、こちらとも異なる種類である。
日本のスズメに比べて人懐っこいが、米粒には興味を示さず、パンくずが大好物らしい。

最初、スズメが12年も生きるものなのか、と思い、少し調べてみたが、飼育下では14年生きた記録があるという。
野生だと2,3年程度の命だと言われている。それを12年も生きさせたという事実だけでも著者のクラレンスに対するこまやかな気配りがうかがい知れる。


著者は、クラレンスとの暮らしの中で、このスズメの特異な才能を2つ発見する。
一つは、芸人・・・もとい芸鳥としての才能、そしてもう一つは音楽家としての才能である。

前者は、空襲からの避難所で人々をなぐさめ、一時、かなりの人気者になったらしい。残念ながら後者の才能は、見知らぬ人がいる前ではほとんど発揮しなかったそうだ。

とかくこういう本では、過度に擬人化したりする傾向があるが、終始、感情的な記述は抑え気味であり、客観的な事実のみを伝えようとしている。
逆にそのような姿勢がクラレンスの「才能」を際立たせている。


ところで、このような話を聞く度に、どこまでが本能による自動的な行動で、どこからが本能を超えた行動なのだろうか、と考えてしまう。
少なくともクラレンスは、著者を他の人間とは違う「個人」として認識、信頼し、愛情を示していた。
また、偶然かもしれないが人間が取るような行動とそっくりのしぐささえ見せた。

過大評価も過小評価も禁物だが、個人的には鳥にも「心」は、存在すると思う。
(「心」というものをどのように定義するかにもよるが、すくなくとも喜怒哀楽を感じるレベルの心はあると思う)


クラレンスは1952年8月23日に老衰のために死亡している。
最後に一声、鳴いたそうだ。
(スズメ語で)著者の名を呼んだか、別れの挨拶をした、と思いたい。
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