小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

Articles

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

相反する心

怪物はささやく
  パトリック・ネス   著
  シヴォーン・ダウド 原案
  池田真紀子     訳
   あすなろ書房



13歳の少年、コナー・オマリー。
ある時、彼のもとにイチイの木の怪物がやってくるようになる。

怪物がやってくる時間は、いつも12時7分ぴったり。

夢とも現実とも定かでない世界で、怪物はコナーにこう語りかける。
「これから、おまえに3つの物語を話して聞かせる。そして、その後、おまえが4つめの物語を私に話すのだ。ただの物語ではない”おまえの真実”の物語を」

一体、何が目的か、と問うコナーに対し、怪物は
「質問を間違えているぞ。問題は、私が何を求めているかではない。おまえが私に何を求めているかだ」
と答える。

怪物を呼んだのはコナー自身だという。
コナーの中の何かが、怪物を呼んでしまったのだ。


ちなみに怪物は決まった名前を持っていない。イチイの木の姿をしているのも「この姿が一番ラク」だから。
ただ、最初の方で自ら
「狩人ハーン」
であり
「樹木神ケルヌンノス」
でもあり
「森の番人グリーンマン」
でもある、と名乗っている。

少し調べてみると、それぞれ元が一緒だったりと関係がある神々。
その中の「ケルヌンノス」は冥府の神とされている。

実のところ、怪物は「コナーの真実」を最初から(ある程度まで)知っているような節がある。
怪物=摩訶不思議な技を使う未知の存在、なので「コナーの真実」を知っていても不思議はない、とも考えられるが、「冥府の神」だから、というのも理由の一つとして考えられそうだ。
(「コナーの真実」はこの辺りに関わる内容)

怪物の目的は「コナーの真実」を知る事ではなく「コナーに真実を語らせる事」
怪物のセリフからも想像できるかもしれないが、「3つの物語」は「4つめの物語」を引き出すための「枕」にすぎない。

怪物が語る物語は、どれも一癖ある物語ばかり。相反する気持ちを同時に抱えた者たちの物語、という点では共通している。
ただ怪物自身も相反する心を抱えているという点では一緒。
毒でもあり、薬でもあるイチイの木の姿をしている事がそれを象徴しているのかもしれない。

挿絵も豊富だが、すべて白黒。怪物も含めた「人物」はシルエットのみのため、不気味な雰囲気を醸し出す。


怪物に”おまえの真実”の物語、と言われた時、コナーは心の奥底で、思い当たるものを感じる。

それはコナーにとって、とてつもなく怖ろしい物語。それを語るくらいなら死んだ方がまし、とさえ思えるほどのもの。
ただ、その物語の底には「3つの物語」と共通するものが流れている。ある意味、「3つの物語」は形を変えた「コナーの物語」でもある。

恐怖を乗り越えるために、恐怖と向き合う。
ごもっとも、と思うが、実際にやってみろ、と言われたら、こう即答するだろう。
「謹んでお断りします」
スポンサーサイト

トラックバックURL

http://randokukanso.blog79.fc2.com/tb.php/388-b007d552

この記事へのトラックバック

この記事へのコメント

コメント投稿フォーム

管理者にだけ表示を許可する

Paging Navigation

Navigations, etc.

About This Website

/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。