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探しモノは何ですか 

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
  ジョナサン・サフラン・フォア
    NHK出版


9歳の少年、オスカーは、9・11のアメリカ同時多発テロで、最愛の父を失い、それ以来、家族からさえもどこか距離を感じるようになってしまう。

父の葬儀からしばらく経ったある日、オスカーは家にあった花瓶の中に封筒に入ったカギを見つける。
家じゅうの鍵穴を試してみるが、合うものはない。

唯一の手がかりはカギの入っていた封筒に書いてあった「ブラック」という文字。
どうやら人の苗字らしい、という事だけは分かったので、オスカーはニューヨーク中の「ブラック」さんに会いに行って、父の事を、鍵穴の事を知らないか、聞いて回る事を決心する。

鍵穴が見つかった時、父がどのようにして死んだか分かる、そうすれば、父の死の瞬間をあれこれ想像する必要もなくなる、と信じて・・・。


この作品は、主人公オスカーの鍵穴を探すエピソードの中に、オスカーの祖父が息子(オスカーの父親)へ書いた手紙、オスカーの祖母がオスカーへ書いた手紙が交互に語られる。
オスカーの祖父、祖母はドイツからの移民なので、英語のタイプの仕方が独特、という設定で、2人の手紙は「。」の代わりに「、」が使われていたり、文と文の間に空白があったりして、少し読みにくい。
また、意図的にかもしれないが、人の名前があまり出てこないので、誰から誰宛なのか、最初、分かりにくいのが難点。


ところで、本作品でのオスカーの鍵穴探しは「謎解き」という程のものではない。
そもそもカギが父親のもの、というのはオスカーの思い込みでしかないのだ。

次第に明らかになるが、「鍵穴探し」そのものが、父親を偲ぶ行為となっている。
確かに熱心に毎週末「ブラック」さんに会いに行くが、どこか必死さを感じない。
むしろ、相手の話をじっくり聞いて、最後にカギについて聞く事が多い。
聞きたいのはカギの事か、相手の話なのか、分からないこともしばしば。

それでもラスト近くになって鍵穴は見つかる。
が、オスカーは、そのカギが花瓶の中に入れられた経緯については詳しく聞くが、そのカギで開けたものの中に何があるかについては、興味を示さない。
むしろ「鍵穴探し」が終わってしまう事に不安を感じる。

「さよならもいわずに」(上野顕太郎)の中で、「弔問客には来てもらうだけでいい」と言う著者に対して、葬儀社の人が花かお線香をあげてもらう方がよい、と勧めるシーンがあった。
葬儀社の人が言うには「何か形があった方が送り手の方が安心するもの」だから、だという。

オスカーにとっての「形」が、この「鍵穴探し」だったのだろう。

ところで、「鍵穴探し」は、オスカーにとって、当初、父親を偲ぶ行為であったが、次第に家族(特に母親)との「絆」を思い知る行為にもなった。
どこか距離がある、と思っていたのはオスカーだけで、実は「ありえないほど近い」距離にいたのだ。
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カテゴリ: ジョナサン・サフラン・フォア

テーマ: 読書感想 - ジャンル: 本・雑誌

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