小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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長話

回想のビュイック8
 スティーヴン・キング
  新潮文庫


ペンシルヴェニア州の田園地帯にある州警察D分署。
この分署の警官がある日、酔っ払いが運転していた暴走車に轢かれ、殉職してしまう。

その息子、ネッドは雑用を手伝うと称して、父の勤務していたD分署に入り浸るようになる。
まるで、そうしているうちに、また父に会えるのでは、と思っているかのように。

次第にD分署の警官達と打ち解けてくるネッド。
こぢんまりとして家族的な雰囲気のあるD分署は、ネッドにとって、ある意味、「家族」だったのかもしれない。

そんなネッドは警官志望でない事を知りながら、警官達は通信係の仕事の助手をやらせてみたり、半ば「同僚」扱いする。
だが、D分署には関係者しか知らない「公然の秘密」があった。

ガレージの中に置かれているビュイック8(エイト)

それが「公然の秘密」
名目上、「押収品」となっているため、警察署にあっても、おかしくはないものではある。
が、冷静に考えると、そんなものが長年、置かれたままなのは奇妙な話。

ネッドもやがて、その存在に気付き、父の親友でもあった分署長サンディに尋ねる。
いつかその質問がくることを予期していたサンディはビュイック8に関する奇怪な話を語り始めた。

「あのビュイック8はビュイック8に似ているから、そう呼んでいるだけで、ビュイック8ではない。それを言うなら、”あれ”は車ですらない。」


すべての経緯を知っている人物が過去を語り、過去と現在のエピソードが並行して進む形式は、著者の「グリーン・マイル」を連想させる。(と思ったら解説にも書いてあった)
「グリーン・マイル」では過去と現在の話の中にオーバーラップする人物が登場する。
本作品でも、現在の話に登場するネッドと、過去の話の中に登場するネッドの父親がオーバーラップする。

最初はサンディだけが話をしていたが、そのうち他の警官も集まり、入れ替わり立ち代り、ネッドに「ビュイック8」の話を聞かせる。
ビュイック8の話を聞かせる事は、仲間として受け入れるための「儀式」の意味もあるのかもしれない。
「グリーン・マイル」もそうだったが、ある程度まで話をしてから、一転して、関係なさそうな話を始めて、ストレートに話を進めず、読者を焦らす「イジワルさ」は健在。

印象的なのは、ビュイック8に関する奇怪な話よりも、一生かかっても理解できないような「謎」を目の前にしても、日常的に接していると「慣れて」しまう事。
人間の柔軟性の高さ、と言えばその通りだが、「おそろしい」面でもある。

「喉元過ぎれば、暑さ忘れる」
というのは、全世界共通で使える諺なのだろうか。
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