小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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チラリズム

怖い俳句
 倉阪鬼一郎
  幻冬舎新書

世界最短の詩である俳句。

その俳句の世界で、誰もがその名を知る「俳聖」松尾芭蕉は
「言ひおほせて何かある」(すべてを言いつくしてしまって、何の妙味があるだろうか)
と言っている。
(この言葉は本書の中でも紹介されている)

要するに「チラリズム」

ただ、俳句で「怪奇」や「恐怖」を表現した場合、短いだけに、かえって想像が掻き立てられてしまう。
本書では、そんな怖い俳句を紹介している。

その怖さの種類にも
「幽霊画を見たり、怪談話を聞いているような怖さ」
「作者自身、もしくは作者がおかれている状況が怖い」
「作者が体験したことが怖い」
といったものがある。

「幽霊画を見たり、怪談話を聞いているような怖さ」は比較的、分かりやすい。(紹介されている句の数も最も多い)
なにより、所詮「絵」や「話」なので、実際に危害を加えてくるようなものではないという、ある種の「安心感」もある。

そのような句の中で印象に残った句としては次のようなものがある。

稲づまやかほ(顔)のところが薄(すすき)の穂  松尾芭蕉
  骸骨たちが能を舞う絵に感じ入っての句。骸骨の幽霊たちが踊り狂うさまを偶然、見てしまったかのよう。

狐火や髑髏に雨のたまる夜に
公達(きんだち)に狐化けたり宵の春
巫女(かんなぎ)に狐恋する夜寒かな
  すべて与謝蕪村の句。怖い句ではあるが、同時に絵になる感じがする。

流燈(りゅうとう)や一つにはかにさかのぼる  飯田蛇笏
  怪奇現象?

蛍死す風にひとすぢ死のにほひ  山口誓子
  嗅覚にうったえる、というのはこの句だけ。「死のにほひ」がどんなものか分かりませんが、嗅げば、それと分かるものなのだろう

百物語果てて点せば不思議な空席  内藤吐天
  さきほどまで百物語をしていたメンバーの一人こそ実は死者そのものだったのか・・・。
  「山小屋の四人」の怪談を連想させる。

水を、水を 水の中より手がそよぎ  坂戸淳夫
  水の中からのびてくる手は「助け」を求めているのか、「仲間」を増やそうとしているのか・・・。

海避けて裏道とほる死者の夏  大屋達治
  海水浴客でごったがえす海沿いの表通りから一歩、裏通りに入ると表の喧騒がウソのような静けさ。
  死者が歩くにはもってこいの環境なのだろう。

隙間より雛の右目の見えてをり  小豆澤裕子
  ホラー映画で隙間から外の様子を覗いたら、邪悪な者もその隙間から中の様子を覗いていた、というシーンを連想させる。

「作者自身、もしくは作者がおかれている状況が怖い」という句(自由律詩が多い)は紹介されている数は少ないものの、かなりゾッとするものがある。

皿皿皿皿皿血皿皿皿皿  関悦史
  よく見ると「皿」の羅列の中に、形のよく似た「血」が混ざっている。
  いまだに意味不明だが、「皿」という日常品の中に突然「血」が出てくる怖さがある。

ホントニ死ヌトキハデンワヲカケマセン 津田清子
  文句なしで怖い・・・。

本書の中で一番、怖かったのが「作者が体験したことが怖い」という句。

戦争が廊下の奥に立つてゐた   渡邊白泉
  廊下の奥に立っていた「戦争」は人型で、ずんぐりむっくりの体型、全身真っ黒、顔は大きな口だけの異形の者(推測)
  「冷酷無比」ではあるものの、「邪気」はない気がする。

この作者の他の句も怖い。

繃帯を巻かれ巨大な兵となる
赤く蒼く黄色く黒く戦死せり
眼をひらき地に腹這ひて戦死せり 
  どれも「この世ならぬ者」が関わっておらず、戦場で実際にありそうな光景なので、よけいに恐ろしい。

結局、一番怖いのは「この世ならぬ者」ではなく、「生きている人間」なのだろう。
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