小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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文人科学者

寺田寅彦
 漱石、レイリー卿と和魂洋才の物理学
  小山慶太
   中公新書


物理学者であると同時に、随筆の名人でもあった寺田寅彦。
夏目漱石の「我輩は猫である」に、いつも妙な実験ばかりしている人物、水島寒月が登場するが、そのモデルになったのが寺田寅彦だと言われている。

発想がユニークなので、随分前から、本人の随筆や寺田寅彦について論じた本を読んだりしていたので、文学の面では夏目漱石の弟子であった事は知っていたが、学問の面で影響を受けていた人物がいたのは知らなかった。

その人の名は、レイリー卿(ジョン・W・ストラット)
ただ、こちらの「師」とは、直接の面識はなく、その論文から影響を受けていた、という。

研究分野は光学、音響学、電磁気学、弾性力学、熱放射理論、水力学、新元素の発見など一言で言い表せないくらい多岐にわたる。
「貴族」なので、経済的に恵まれていて、自分の研究資金を自分の財布で賄えたので、興味の赴くまま、様々な分野の研究ができたのだ。

言わば「道楽科学者」
が、だからと言って、研究のレベルが低い、というわけではない。
それどころか1904年のノーベル物理学賞を受賞するほど優秀な人物。

寺田寅彦も、「墨流し」「線香花火」「ひび割れ」など、多様なテーマを研究したことで知られる。
一言で言い表せないくらい多様な分野を研究した、という点を見ると、レイリー卿に実際に弟子入りしていたのでは、と思うほど。

寺田寅彦が物理学者として活躍していた頃は、ちょうと相対性理論や量子力学が出てきた頃。
この分野の研究を行えば、すぐ新発見ができると多くの物理学者が研究を始める中、寺田寅彦は、あくまで「目で見える現象」「身近に見られる現象」についての物理学にこだわった。
(後に気象や海洋、地質学とも重なる「地球物理学」を提唱している)

が、「流行」に背を向けるのではなく、「流行」の動向を注視しつつも、我が道を行く。
流行分野が理解できなかった訳ではなく、その流行分野についての事をテーマとした(一般向けの)随筆も何本か執筆している。
今なら「サイエンスコミュニケーター」だろうか。

寺田寅彦の研究スタイルは「寺田物理学」と呼ばれ、良くも悪くも「文人趣味」と言われたらしい。
が、相対性理論や量子力学が「原子爆弾」という「重い十字架」を背負ったのに対し、(大袈裟に言えば)寺田物理学は鳥瞰図的な広がりを持っていた。

「天は二物を与えず」と、よく言われるが、科学者としての才能と文学者としての才能の両方が同時に備わるのも、非常に稀な事なのだろう。
それほど多くの名前は挙がってこない。
寺田寅彦の「二物」は、中谷宇吉郎が「相続」したが、その後は、誰が「相続」されたのだろう。
(「相続」したのは、朝永振一郎だろうか?)

この系譜について、追いかけてみたい。
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