小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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正統派ファンタジー

ドラゴンの眼
 スティーヴン・キング
  アーティストハウス


モダンホラーで有名な著者が描いた正統派ファンタジー。

キングの事だから、一癖も二癖もあるものだろうと「期待」してしまうが、その「期待」は裏切られる事になる。
ただし、いい意味で。

ところどころ、キングらしい不潔のようであっても、人間らしさを感じる描写もあるが、どこまでも正統派のファンタジー。
それもそのはず、元々は著者が自分の娘に読ませるために書いた物語が原型だから。

とある平和な王国に邪悪な魔法使いフラッグが家臣として潜り込み、やがて国王を毒殺し、二人の王子のうち、兄のピーターにその罪を着せて投獄。
王座についた弟、トマスを言葉巧みに操って、王国を混乱に陥れる。
陰謀は完成したかに見えたが・・・、という話。

主人公のピーターは容姿端麗、頭脳明晰、質実剛健。
カリスマ性もあり、お話の中の人物としては魅力的なのだが、正直、現実に近くにいると、こちらが疲れてしまうタイプ。

むしろ親近感を覚えるのは弟トマス。

「王子」という立場にさえなければ、気弱だが、やさしい少年。
ただ、なにかと兄と比較されてしまう。
しかも比較対象にされる兄は「超」がつくほど(いい意味での)優等生。

王や家臣がピーターを賞賛する声は、裏返せば自分が劣っている点を責めたてる声となる。
無論、王や家臣は、単純にピーターを褒めているだけなのだが、兄との歴然たる差を自覚しているトマスにとっては、そうは聞こえない。

トマスのピーターへの想いは愛憎半ば。
その「憎」の部分をフラッグにつけこまれ、いいように操られてしまう。

以降、ネタバレ注意。

クライマックスでフラッグがたまらず逃げ出すほどの強烈な一撃を与えるのはピーターではなくトマス。

弱虫だった自分を乗り越える、という象徴的な(悪く言えばありがちな)シーンのようにも見えるが、ラストで旅に出たトマスは再びフラッグと出会い、対決すると1行だけ書いてある。

クライマックスでの対決後のフラッグはトマスの「弱さ」の象徴のように思える。
(それまでは分かりやすい悪役なのだが)

「弱虫」は「直る」ものではなく「小さくなる」だけ。
一度はフラッグを追い払い、自信をつけ、「弱虫」は小さくなったが、何かの拍子で成長してしまい、また対決する事になったのだろう。

本作では「そういう話は、また別の日にしましょう」と書かれているだけだが、もし描かれるとしたら、「英雄伝説」とは程遠い、カッコ悪く、泥臭い物語になるだろう。
むしろ、そういう展開になる方が面白いと感じるが・・・。
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