小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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「無限」は続くよ、どこまでも

「無限を読みとく数学入門
  世界と『私』をつなぐ数の物語」
    小島寛之  角川ソフィア文庫



子供の頃、大きさを比べあっていた時、お互いムキになって大きさがエスカレートした挙句、

「無限」

が出てきて、

「無限より大きい」

とか

「無限より10大きい」

とか言いはじめ、最後に

「無限より無限、大きい!」

などという言葉が飛び出したことがあった。

「こっちの無限の方が濃度が大きい」
と言うべきだったが、おバカな小学生だった自分にそんな難しいセリフが言えるはずもない。


ところで、この「無限」とは一体、何者なのだろう。

「自然数の個数は無限」というのは誰でも分かる。
が、「偶数と奇数の個数は?」と問われたら、答えは「無限」である。
偶数、奇数は自然数の数より少ないはずなのに、どちらも「無限」。

では、「無限」-「無限」=0なのか、というと、これは成り立たない。

とても奇妙な「無限」。
ここまでくらいなら、まだ「奇妙」で済むが、もっと突き詰めて考えていくと、とんでもない
「怪物」を呼び起こしてしまう。

「無限」を考える上での問題点が数学の公理にまで飛び火するのである。

この問題を解決すべく(これだけがきっかけではないが)「数学のすべての定理を論理
的に導ける公理群」を考察する「ヒルベルト・プログラム」が鳴り物入りで始まるが、
思いがけない結末が待っていた。

(ちなみに「公理」というのは、証明なしで正しいと認める事柄で、例えば、A=B ならば
 A+C=B+C であるといったようなもの。
 これを認めないと何も始まらない、とでもいうべきもので、「定理」は「公理」から
 導き出されるもの)


オーストリアのクルト・ゲーデルによって示された答えは、
「数学は、自分の無矛盾性を
  自分で証明することはできない」

というもの。

衝撃の結末であった。
が、だからといって、即、数学が使い物にならない、ということにはならない。

ピタゴラスは「万物は数(有理数)である」と言ったが、そのピタゴラス自身、
有理数でない数(=無理数)の存在に気がついていた。
だが、そのおかげで円周率を 3.14 にすべきか 3,14159 にすべきか、
はたまたその間にすべきか、悩まずに済んだ。

また、平行線についての第5公理
「一つの直線が二本の直線と交わり、同じ側の内角の和が2直角より
小さいならば、これらの二直線を限りなく延長すると、二直角より小さい角の
ある側で交わる」
はガウス、ボヤイ、ロバチェフスキーにより証明できないことが証明された
ことにより、「非ユークリッド幾何学」(曲面上の幾何学)が生み出されることになった。

否定されることによって、あらたな可能性が花開いたのだ。


本に書かれている内容がすべて理解できた、とは言えないが、「入門」と
タイトルについているだけあって、複雑な計算式などは出てこない。

また、変わっているのは最後の1章が「無限」をテーマにしたSFになっていること。
いきなりここから読んでも面白いが、やはり、少々、難しいところがあっても
最初から読んだ上で、最後の章を読んだ方が楽しめる。

一時は、久しぶりに「理解不能」な本を買ってしまったか、と心配になったが、
どうにか「消化不良」程度で済んだ。
ふぅ、あぶない。
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