小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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ライトスタッフ

ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験
 大鐘良一・小原健右
  光文社新書


2008年2月27日、JAXAが次のような発表を行った。
「ISS(国際宇宙ステーション)長期滞在に対応可能な日本人宇宙飛行士の候補者を新規に募集・選抜する」

前回の選抜試験から10年ぶりとなる「採用試験」への応募総数は過去最高の963人。

だが、選抜試験自体も最も厳しいものとなる。
これまでは「研究者」「技術者」「長期滞在者」を求めていたのだが、今回から「船長」になれる人材を探そうとしていたのだ。

応募者たちは、まず書類選考、英語試験、医学検査で230人に絞られる。この時点で4分の1以下。
次に1次選抜で48人に絞り込まれ、2次選抜を突破したのは10人。この10人が最終選抜(3次選抜)に進む。

本書はこの選考過程に密着したNHKの番組スタッフによるドキュメンタリー。

選考内容は、あの手この手で応募者を突き回し、「ライトスタッフ」(正しい資質)を持つ者か、見極めようとする。
時には、嫌がらせとしか思えないような無理難題もふっかける。

印象的なのは1次試験を突破した48人に対する面接の内容。
「なぜ宇宙飛行士になりたいのか?」
という質問に対して、
「子供の頃からの憧れでした」
などと答えようものなら、たちまち
「宇宙飛行士になって、やりたい事は何か?」
とツッコミが入る。

応募者が研究者だった場合、同じ問いに対して、
「宇宙で自分が携わっていた分野の実験がしたい」
と答えれば、
「宇宙飛行士は、つまるところ実験装置のボタンを押すことしかできない。
宇宙飛行士になれば研究は一切できなくなる。自分のキャリアを捨てることになるが未練はないか?」
と言われてしまう。

要するに、わざとプレッシャーをかけ、よってたかって「覚悟」を見極めようとしているのだ。

一貫して問い続けたのは
「危機の中にあっても”集団を統率する力(リーダーシップ)”と”チームワーク能力(フォロワーシップ)”を発揮できるか」
という事。

「チームワーク能力(フォロワーシップ)」は聞きなれない言葉だが、「リーダーに従い、支援する力」の事。
単なるイエスマンではなく、必要な時には全体の雰囲気に流されず、提言ができる能力。

「全体の雰囲気に流されず」の部分が日本人(の多くが)が最も苦手とする事かもしれない。
(自分がそうなだけかもしれないが・・・)

最終選抜試験は前半・後半で2週間に及ぶ2部構成。
前半は1週間の「閉鎖環境試験」、そして後半はNASAで行われた。

本書で語られる主な内容は、この最終選抜試験の様子。

閉鎖環境試験は、極限のストレス状況下で「資質」を発揮できるかを見るものだが、錚錚たる経歴を持つ候補者でさえ、ペースを乱されていく。

「面白南極料理人」(西村淳)でも、8人しかいない「南極ドーム基地」という閉鎖環境で隊員たちの言動がだんだんおかしくなっていく事が語られる。
料理人である著者は事あるごとに「宴会」を企画し、ストレス発散に努めていたのを思い出した。

自分なら1日で音を上げる、と自信を持って言える。(1日ももつか・・・)

NASAでの「試験」は、当然、日本以上に「仕掛け」があるが、最も重視されるのは「面接」

日本での面接とは異なり、
「この人物と一緒に仕事ができるか」
を見極めようとする。

が、同時に候補者が
「一緒に仕事をしたいと思う組織か」
という事を見極める場でもある、と意識している。

結局のところ、一般企業での採用面接のポイントもこの点。
(レベルはまるで違うが・・・)

最近、一般人を対象にした「宇宙旅行」の募集のニュースなどもあり、昔より「宇宙」は身近になっているように思えていた。
が、不注意一つで、命を落とすほど、過酷な環境であることには変わりない。

「宇宙旅行」は当分、やめておいた方が身のためのようだ。
それ以前に料金を払えるかが問題だが・・・。
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