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イカをたずねて三千里 

ドキュメント
 深海の超巨大イカを追え!
  NHKスペシャル深海プロジェクト取材班+坂元志歩


「海は好き?」
「あ、はい!」
そんな他愛無いやりとりが、全ての始まりだった。

本書はNHKスペシャル深海プロジェクト取材班がダイオウイカを追い続けた2002年から2012年の10年間のドキュメント。
言った方も言われた方も、その後10年、苦闘する事になるとは夢にも思わなかっただろう。

ダイオウイカは深海に住む巨大イカで、触腕も含めると6.5mにも達する。
天敵はマッコウクジラ。

マッコウクジラの体にダイオウイカの吸盤の跡が残っている事が観察される事がある。
そのため、海中では、マッコウクジラvsダイオウイカの死闘が繰り広げられている、と思われるが、その瞬間を見た者はいない。

ところで、北欧伝承の中に海の巨大生物、クラーケンが登場する。
海を舞台とした冒険モノで、登場するケースも多いが、その姿となると、描かれ方は様々。
ただ、最も多いのはイカ・タコのような頭足類の姿で描かれている事が多い。

ダイオウイカこそ、海の怪物クラーケンの正体、とする説もある。


実際の取材ではダイオウイカに振り回されっぱなしだが、「奇跡」は3度起こる。

まず、取材を始めて2年後、2004年に海中のダイオウイカの静止画撮影に成功する。
が、ビギナーズラック、とでも言うべきもので、謂わばダイオウイカからの「挨拶」

次に、2006年、2度目の奇跡。
今度はダイオウイカそのものが釣れてしまったのだ。
(ちなみにダイオウイカは食べると不味いらしい)

結局、船上に揚げる時に死んでしまうが、海面近くで必死に抵抗するダイオウイカの動画の撮影に成功する。

しかし、その後、長い試行錯誤&苦闘の日々が続く。
結果が出ず、プロジェクト存続の危機さえ訪れる。

その間、じつに6年。
自分なら成果が出ない期間が6ヶ月でも耐えられるか分からない。

そして、2012年、最後で最大の奇跡が起きる。
海中のダイオウイカとの「接近遭遇」だ。

この時の調査は、国際協力体制が敷かれ、潜水艇も使った、かなり大掛かりなものとなっている。
そして、NHKスペシャル「世界初撮影! 深海の超巨大イカ」 のクライマックスでもある。

海中でダイオウイカの撮影に成功した時、潜水艇に乗っていたのは窪寺博士。
NHK取材班より前からダイオウイカの研究をしていた専門家。

その専門家の前にダイオウイカが姿を現したのには、運命的なものを感じる。
長年、研究していた博士へのダイオウイカからの「褒美」だったのかもしれない。

ただ、その時の博士の気持ちは
「見つけた!」
なのか
「見つけてしまった!」
なのだろうか?

海中で撮影されたダイオウイカの目は、まるで
「人間風情が、よく頑張ったな。」
と言っているかのよう。

欲目かもしれないが、その目には知性すら感じる。
それに威厳に満ちている。

まさに「大王」

3度目の奇跡の場面では、新書にしては珍しくカラー写真が何枚もある。
また、本書の先頭と末尾にも、この時の「奇跡」の写真が多数、掲載されている。

この事だけでも、著者達の力の入り方が分かる。

また、本屋の科学雑誌のコーナーではダイオウイカをはじめとした深海生物を取り扱った様々なムックが並んでいるし、国立科学博物館では特別展「深海 -挑戦の歩みと驚異の生きものたち-」が開催されている。
関係あるか分からないが、2013年6月には、深海生物のダイオウグソクムシ(別名、海の掃除屋)の実物大ぬいぐるみが発売当日に3時間で売り切れた、という。

深海ブームらしいが、ダイオウイカがこれを知ったら、
「たかだか23分ほど撮影させてやっただけで、人間界では”ブーム”とやらが起きるのか・・・」
と呆れかえるだろうか?
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カテゴリ: NHKスペシャル深海プロジェクト取材班+坂元志歩

テーマ: 読書感想 - ジャンル: 本・雑誌

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