小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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サイバーパンク

銃夢(ガンム)外伝
 木城ゆきと
  集英社



1990年から1995年にかけて連載されたSFマンガ。
現在も続編「銃夢 Last Order」が連載中。
個人的には、このマンガ、主人公よりも、その敵役や、脇役の方に魅力を感じていた。

本編の方はサイバーパンクに分類されるマンガであったが、「銃夢 Last Oeder」は途中からSF味付けの格闘アクション(お笑い要素も多い)とでも言うべきものになり、個人的な好みからずれてしまった。
が、本書は本編「銃夢」の外伝。

「聖夜曲」
「音速の指」
「故郷」
「馬借音頭(ばしゃくおんど)」
の4作品から成る。

「馬借音頭」のみ「銃夢」の関連するストーリーの知識があった方がよいが、それ以外は単独のSF作品として楽しめる。

「音速の指」は達人対達人の息詰まる戦いが描かれる。
一方の達人は本編での主人公ガリィ。「機甲術」(パンツァークンスト)と呼ばれる格闘術を使う。
もう一方は「音速の指」と呼ばれる犯罪者(姓名不詳)

「音速の指」がガリィに挑む事を決めた時に読んでいた本は「白鯨」(ハーマン・メルヴィル)
そして、ガリィが「音速の指」への「招待状」を挟んでいた本は「悪について」(エーリッヒ・フロム)

「音速の指」にとって、ガリィは「白鯨」だったのだろうか?
ガリィが「悪について」を「音速の指」に渡したのは、「音速の指」が「衰退の症候群」(=人間を破壊のための破壊へかりたてるもの、そして憎悪のための憎悪へかりたてるもの)の典型、と言いたかったのだろうか?
(付け焼刃の知識なので、的外れかもしれないが)


印象に残ったのは「聖夜曲」と「馬借音頭」

「聖夜曲」はイド(本作の主人公)と無垢というか白痴に近い少女との物語。

腕のいい医者であるイド(ただし、本作では訳あって、自分の診療所どころか、ほとんどその日暮らしの生活を送っている)は、体の一部や臓器を失った患者へ、クローン技術を使って患者の細胞から作った腕や臓器を移植する医療を施す医者デデキントと出会い、スカウトされる。
自分の理想とする医者の姿とは異なるが、患者が喜ぶ姿は一緒、という事で無理矢理、自分を納得させるイド。
だが、デデキント医師が目指していたものは・・・。そして、イドが出会った少女の正体とは?

遠い未来が舞台の話だが、今も医療だけでなく、様々な事で、「やれる事か」と「やるべき事か」が考慮されているのか、と疑問に思った。

ちなみに本作が発表された時期は、ちょうど「クローン羊ドリー」が話題になった時期と重なっている。
作中、デデキント医師が行っていた医療は、iPS細胞の研究で目指しているものであるだけに、今、読んだ方がゾクッとする。


「馬借音頭」は、タイトルからするとコメディ作品のように思えるがそうではない。

「銃夢」本編では「荒野の魔王」の異名を取る"電(デン)"と、彼が率いる反乱軍"馬借(バージャック)"との戦いが描かれたが、本作は、この後日譚。
本作の主人公であるコヨミは馬借のマスコット的な存在であった少女。

本編で馬借の反乱は失敗、電は死亡している。
その後、コヨミはカメラマンのタマゴとして逞しく暮らしていた。

そんな中、「死んだはずの"電"が甦った」というウワサを聞く。
電の最後を目にしていたコヨミは「そんな事はありえない」と思いつつ、「スクープのため」と称して取材へ。

ただ、実のところ、コヨミにとって、スクープはどうでもよい話だった。
ひたすら"電"に会いたかっただけ。

周囲にはタフなように見せていたが、それは表面上の話。
電という、信じられるものを失い、どうやって生きていけばいいか分からなくなっているのだ。
そして、「"電"復活」の真相に「人の醜さ」を見せつけられる。

コヨミを救えるのは電だけだが、その電は、もういない。
半ば自暴自棄になるコヨミだが、その前に現れたのは、コヨミを救える唯一の人物・・・。

本作では、コヨミが取材の中で出会ったゲリペリ老人が、いい味を出している。
一見、とらえどころが無いというか、むしろアヤシゲな老人だが、それは仮の姿。

背中で語る、という言葉がピッタリはまる。
こういう大人、今どれくらいいるだろうか。

ちなみに「銃夢」本編の馬借(バージャック)の反乱終結後、為すべき事を見失った人物がもう一人。
その人物については「銃夢 Last Order」の"夢の罪の重さを"というエピソードで描かれる。
(こちらも印象に残るエピソードだった)

電は、なかなか罪作りな人物!?
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