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「慣れる」こと 

時間封鎖
 ロバート・チャールズ・ウィルスン
  創元SF文庫


ある晩、空から星が消えた。翌朝、空に昇ってきたのは太陽によく似た何か。

地球周回軌道上にいた有人宇宙船の乗組員は証言した。
「地球が暗黒に包まれた」と。

そして、彼らは、その事件が起きた一週間後、地上からの支援がないまま、決死の覚悟で大気圏へ突入する。
生き残った乗組員が目にしたのは、異変発生直後で騒然としている世界。

地球の時間だけが1億分の1の速度になっていたのだ。
一体、誰が、何のために?

本作では二つの時間軸で物語が進行する。

一つは主人公タイラーが回想する形で語られる過去の物語。
もう一つはタイラー自身の現在の物語。

これらの2つの流れが交互に語られ、ラストでは一つの流れになる、という趣向になっている。
スティーヴン・キングの「IT」「グリーン・マイル」が同じような語り口だったのを、ふと思い出した。

最初は「現在の物語」の位置付けが理解できず(人間関係も把握できてないので)面食らう事になるが、そこは耐えるしかない。
ただ、慣れてくると2つの時間軸の中にお互いに伏線が敷かれていたりすることに気付いたりして、構成を楽しむ事もできる。

印象に残ったのは、後に「スピン膜」と呼ばれる暗黒に包まれた直後の状況。
異変に驚き、原因を突き止めようとする人々がいるのは普通として、それが長く続いた場合、「慣れる」ということ。

確かに「異変」が起きたとしても、メシは食べなければならないし、寝ないと体がもたない。
メシを食べるためには、買い物に行かなければならない。
そのためには、お金が必要で、働かなければ、お金も得られない。

要するに驚いてばかりいたら、生きていけない。

なんとなくスタニスワフ・レムの「ソラリスの陽のもとに」で、惑星ソラリスで発見された生命体「海」にまつわる興奮に似ていると思った。
最初は、生命体の発見に沸き立つが、その後、「海」とのコミュニケーションが全く進展しない期間(時代)が長く続く。
そのため、興奮は次第に覚めていき、ついには「そもそもあまりに違いすぎるので理解することなどできない相手なのでは?」という考え方さえ登場する。

あまりに大きすぎる謎(と同時に長く続く謎)には、人間は耐えられないのではないか?という趣旨のタイラーのセリフがある。
「慣れ」というのは、そんな事態に対処するための心の防衛機構なのだろうか。

その「事態」が、どれほど途方も無い「事態」であったとしても。
・・・というより、途方も無い「事態」であればあるほど、なのかもしれない。
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カテゴリ: ロバート・チャールズ・ウィルスン

テーマ: 読書感想 - ジャンル: 本・雑誌

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