小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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アンパンマンと「正義」の話をしよう

わたしが正義について語るなら
 やなせたかし
  ポプラ新書


「やなせたかし」と聞くと、これまで「アンパンマン」の作者という認識しかなかった。
その訃報を聞いた時に、「アンパンマン」に込められた想いも紹介されて、少し気になっていたので、思わず購入。

やなせたかし氏が自身の考える「正義」について語るもの。
また、同時に全体の半分ほどのページを割いて、自身の人生を語っている。

著者の考える正義は「飢えている人に一切れのパンを差し出す事」
まさに「アンパンマン」が行っていた行為。

そして、こうも語る。
「正義というのはあやふやなもので、ある日、突然逆転する。」
「正義のための戦いなんて、どこにもない。」
「正義は勝ったと言って、いばっている奴は嘘くさい。」

世界のリーダーを自認する国や、口先だけの「反省」を言う政治家に聞かせてやりたい。

ただ、著者は「悪人」に対しても、優しい目を向ける。
「悪人であっても正義感や優しい心はある。善人にも悪い心はある。ただ、分量の問題にすぎない。」

言われてみれば、その通りだと思うのだが、ひどい事件のニュースなどを見た時など、すっかり忘れている事が多い。

全体として、著者の語る「正義」は、戦争に行って、苦労した人でないと言えないものだと思う。
・・・というより戦争で兵役についた事がある人が語るからこその重みのある話だという気がする。

最近、「世界の平和に貢献するため、血を流す事も・・・」と言う政治家や、その支持者がいたりするが、軽々しく語って欲しくない。

「正義を行う場合には、本人も傷つくという事を、ある程度覚悟しないとできない。」
自分自身も傷つく覚悟があって、語っている人はどれほどいるだろうか?

こういった事だけでなく、正しいと思って行った事が、仲間、もしくは自身の属する組織の不利益になるとしたら?
自分が傷つく事になったとしても、行動に移せるだろうか、それとも長いモノに巻かれる道を選ぶだろうか。

企業の不祥事としてニュースになるのは後者の道を選んだ場合、そうなる、というのは分かるが・・・。

こんな事を考えていると、見透かしたかのように著者はアドバイスをしてくれる。
「自分なりに戦えばいい」と。

それが、どんな方法なのかは分からないが、こう言ってくれると、なんだかできそうに思えてくるから不思議。
著者の思う壺にハマッているだけかもしれないが・・・。

本書の最後は「アンパンマンのマーチ」の歌詞で締めくくられる。
結局、著者の考える「正義」は、この歌詞の中に凝縮されているそうだ。

あらためて歌詞を見てみると、本書で語っていた事が全て込められている。
子供向け番組の主題歌、ということで、今まで軽く見ていたのが恥ずかしいくらい。

初期のウルトラマンのシリーズでも、製作者達は「今は分からなくてもいい。将来、大きくなって思い返した時に気付いてくれればいい」という思いで、重いテーマも盛り込んでいたそうだが、「アンパンマン」も同じだったとは知らなかった。
子供の頃に見たアニメなどの主題歌は大人になっても、結構、覚えていたりするので、主題歌にメッセージを込める、というのは、かなり有効な手段かもしれない。
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