小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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カミングアウト、再び

納豆に砂糖を入れますか? ニッポン食文化の境界線
  野瀬泰申
   新潮文庫


日本経済新聞HP「NIKKEI NET」の2002年11月から8年にわたって連載した「食べ物 新日本奇行」の一部を編集したもの。
「天ぷらにソースをかけますか?」の続編となる。

タイトルにもある
「納豆に砂糖をいれますか?」
という問いから始まって
「すき焼きに入れるこんにゃくは"しらたき"?"糸こんにゃく"?」
「メンチ?ミンチ?」
「せんべいは米粉?小麦粉?」
「お正月は鮭か、ブリか?」
等々の質問が並ぶ。

納豆に砂糖を入れるのは、聞いた事があるので、それほどの衝撃ではなかったが、今回も自分の「常識」が崩れ去る瞬間が多々あった。

上に挙げた質問で言えば、すき焼きに入れるのは"しらたき"。
スーパーでは"メンチカツ"が普通に売られている。
本書でも指摘されていたが、生のひき肉の状態では「ミンチ」と呼ぶのに、油で揚がった瞬間、「メンチ」になる、という事には、なぜかこれまで疑問さえ持たなかった。

実家は「草加せんべい」の影響が強力だったので、せんべいと言えば、米粉以外には考えられず、瓦せんべいなどの小麦粉が原料のものは、名前こそ「せんべい」とついているものの、コバンザメがサメでないのと同様に、せんべいとは別物である、という認識でいた。
また、正月(というより、直前の年の瀬)は日本全国、新巻鮭が「回遊」しているものとばかり・・・。

そして、またしても浮かび上がってくる、日本を東西に分断する「糸魚川-静岡構造線」

本書の最後の章は「糸魚川-静岡構造線」を辿り、ネギ、カツ丼、醤油などを指標とした調査結果レポートとなっている。
「糸魚川-静岡構造線」上の南北方向の食の境界線を探す旅。
なお、この章で醤油に甘いものが存在する事や、(カニカマ、笹カマボコ以外で)板についていないカマボコが存在する事を初めて知った。

面白いのは、山や川といった明確な境目がない場合でも、食の境界線が存在するケースもある、という事。
一体、食(文化もだが)の境界線は何が「くさび」になるのだろう?

それにしても、本書で紹介されているような食べ物の分布状況は、食材の入手のしやすさ(鮮魚が手に入りにくい地域で、動物性たんぱく質を摂取するために昆虫を食べる等)以上のものがあるような気がする。
要するに同じ食材でも、いろいろな食べ方を工夫する事に情熱を傾けるのが日本人の特徴の一つでは?と思えてくる。

あとがきでは、エジプトの「モロヘイヤ」は、現地ではスープでしか食べないが、日本ではパン、天ぷら、クッキーなどにして食べている例が紹介されていた。
ハンバーガーでも「テリヤキバーガー」が、アメリカへ逆上陸しているが、そこまでいかなくても「ご当地バーガー」は豊富に存在する。
果たしてアメリカのハンバーガーには、このようなバリエーションはあるのだろうか?
(日本以上に存在したりするかもしれないが・・・)

かつて、日本人は「エコノミック・アニマル」と呼ばれた時期があったが、それが如何に一面しか見ていないものだったか、というのがよく分かる。
(元々は褒める意味だったそうだが、次第にマイナスの意味が強くなったらしい)





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