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無用の用 

笑う科学 イグ・ノーベル賞
 志村幸雄
  PHPサイエンス・ワールド新書


最近、日本でも知られるようになってきたイグ・ノーベル賞。

授賞の公式基準としては
「人々を笑わせ、そして考えさせる研究であること」
「真似ができない、またするべきでない業績であること」
という事が掲げられている。

また、非公式基準として
「目を見張るほどバカげているが、刺激的でなければならない」
というのもあるらしい。

本家、ノーベル賞は6つの賞(物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞、経済学賞)しかないが、イグ・ノーベル賞は40種類にも及ぶ。
これは、授賞対象の研究を決めてから、それにふさわしい賞の名前を決めているためだとか。

この賞は、意外に日本人の受賞者が多い。
「カラオケ」の発明者が平和賞を受賞(2004年)しているし、犬語翻訳機「バウリンガル」が受賞した時(2002年)は、随分、大々的に報道されていた。
(カラオケがバウリンガルより後、というのは意外)
また、先日の東京都知事選の候補者の一人、ドクター中松は「34年間、自分の食事を撮影し、食べた物が脳の働きや体調に与える影響を過去にまで遡って分析し続けていること」に対して、栄養学賞(2005年)を受賞している。

原則、科学の業績を評価するものだが、例外的に皮肉として、賞を授与するケースもある。
(例えば2013年の平和賞は「公共の場で拍手喝采することを違法にしたこと」に対して、アレクサンドル・ルカシェンコ (ベラルーシ大統領)と「片腕しかない男を拍手喝采した罪で逮捕したこと」に対して、ベラルーシ警察に平和賞(2013年)が与えられた。)

この賞の性格上、当初は科学をバカにするもの、と誤解して批判にもさらされた。
が、この賞は「科学を嘲笑しているのではなく、科学が持つ楽しさを笑うものなのだ。」(科学専門誌「ケミストリー&インダストリー」)

イグ・ノーベル賞を受賞した研究(皮肉で賞を与えたものは除く)のタイトルがバカげている(もしくはふざけている)ように見えるからといっても、その研究の本質は深い。

1995年の心理学賞は「ピカソとモネの絵画を見分けられるようにハトを訓練し、成功したこと」に対して、慶應義塾大学の渡辺茂、坂本淳子、脇田真清が受賞しているが(本書でも紹介されている)、この研究は突き詰めると、「動物の認知能力とは何か?を解明する研究」となる。
この研究を「くだらない」と否定する事は、「認知能力の解明なんか、くだらない」と言っているのと同じことになる。

まさに「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」である。
「無用の用」と言うべきか。

映画の世界では「アカデミー賞」が有名で「権威」ともなっている。
が、個人的には、それより最低の映画、俳優を表彰する「ゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)」の方が好きだ。
映画の紹介だと「面白い」としか言わない(言えない)事が多いので、ラジー賞(の選考を行う会員)の評価の方が正しいと思えるのだ。

アカデミー賞(作品賞)を受賞した映画で、本当に面白いと言えるのは2,3年に1本だけ、と言われるなど、アカデミー賞は「権威」になった事で、初心を忘れているフシもある。(多少だと思いたいが)
イグ・ノーベル賞もいつかは「権威」になってしまうのだろうが、今までの「ノリ」は失わないで欲しい。
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カテゴリ: 志村幸雄

テーマ: 読書感想 - ジャンル: 本・雑誌

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