小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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禁断の力

ペット・セマタリー
 スティーヴン・キング
 深町眞理子 訳
  文春文庫


「怖い」というより「哀しい」話。

愛する息子が交通事故で、死んでしまった。
その死を受け入れられない、受け入れたくないために「ある力」に手を出してしまう。

ペット霊園のそのまた奥、近づく者さえいない深い深い森の中の「ある力」に。
それが「呪われた力」だと知りながら・・・。

しかも、何度も同じ過ちを繰り返す、という点が愚かしくもあり、哀しくもある。

「呪われた力」は、決して完全な形では、家族を返さない。
愚鈍になったというレベルから、中身は完全に別の(そして邪悪な)「何か」に入れ替わってしまったというレベルまで。

(決して完全ではないが)良い結果が出る可能性があるからこそだろうか、「呪われた力」には中毒性がある。

「前の奴は失敗したかもしれないが、自分は、うまくやれるさ。」と。
ただ、実際は「リスク」を過小に、「リターン」を過大に評価しているだけ。

そして、この「呪われた力」には、伝染性も。

「あの人の悲しむ姿を見たくない」
「あの人は悲しみに耐えられないのではないか」
という思いから、知る者は、知らない者に「呪われた力」の事を伝えてしまう。

が、それこそ「呪われた力」の狙い。
大きな「悲しみ」を抱えた者を自分の所に呼び寄せ、その「悲しみ」を糧とする。

そして、一度、「力」を利用すると、いずれ再び利用しなくてはいられなくなる。
得てして新たな「犠牲者」を連れて・・・。

ただ、この「呪われた力」そのものは、本書のメインではなく、「死」(裏返せば、「生」もしくは「愛」)がテーマ。

文庫本で上下巻に分かれていて、上巻では飼い猫のチャーチにまつわる奇怪な話(それが下巻の前フリになる)があるものの、概ね主人公の幸せな様子が描かれる。
特に上巻の最後の方の仲睦まじい父と子の様子の描写が印象的。

そして「悲劇」は下巻の冒頭に起きる。
・・・というか、下巻は、いきなり「悲劇」が起きた後から始まる。

主人公が半ば自動で動きながら、息子の葬儀の準備をしつつ、「悲劇」の瞬間を思い出していく、という形式。
その記憶の中では、ラスト、間一髪で息子を救うが、現実に戻った時、息子はいない。

所謂「死亡フラグ」を使った展開。
それに加えて、妻の養父との不仲による修羅場の話も交えて、主人公の喪失感が浮き彫りになる。

さらに上下巻の分かれ目もうまく利用しているのでは、と思った。。
(単行本の時は、どうなっていたか知らないので、単に偶然かもしれない。
が、キングならやりそうなので。)

ただ、子供の描写が生き生きとしている分、同じくらいの年頃の子供がいる人には、読むのがツライかもしれない。
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