小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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相手が望んでいたウソ

フェルメールになれなかった男
  フランク・ウイン
    ちくま文庫


20世紀最大、と言われた贋作事件を起こした男、ハン・ファン・メーヘレン。
本書はフェルメールの贋作を描き、美術界を欺いた彼の伝記。

1945年5月、ハンはオランダからナチス・ドイツの高官にフェルメール(オランダで活躍した画家)作の絵画を売った罪で、逮捕・起訴される。
実は、ナチス・ドイツの高官に売ったのは、フェルメール作品などではなく、自分が作った贋作。

ここで、ハンは自分が奇妙な立場にいることに気付く。

つまり、贋作だという事を認めれば、「ナチス・ドイツを手玉にとった英雄」になる代わりに、自分の「作品」には何も価値が無い、という事を自ら宣言することになる。
逆に贋作を認めなければ、自分の「作品」が今後も、フェルメール作品として崇め奉られる代わりに、自分は「ナチス・ドイツ協力者」の烙印を押されてしまう。

芸術家としての名声か、自身の名声か。
なかなかキツイ、二者択一。
ハンも数日悩んだそうだが、自分なら数ヶ月経っても悩んだままだろう。

結局、ハンは前者、つまり贋作を認める。
が、ここでも皮肉な状況が生まれる。

ハンが真実を言えば言うほど、それを信じない(信じたくない)人々が強硬に反論するのだ。
「絵の具から○○○が検出されるかのテストをしてみろ」等のアドバイスをハンが与えて、実際、その物質が検出されたりしても。

ハンの裁判は最初こそ騒がれたものの、判決が出る頃は、あまりにもあっけなく済んでしまう。
(3年近く準備期間を設けたり、と長引いたという事情もあるが)
関係者が多く、また地位のある人も多かったため、その人たちが傷つかないように、ガッチリと裁判のストーリーが決められ、そのシナリオに沿って、淡々と進められてしまったのだ。
それは当のハンが拍子抜けしてしまうほど・・・。

ハンの贋作がまかりとおったのは、自身の絵の才能もあるが、もう一つ、大きな要素がある。

フェルメールには、その活動期間に空白の期間があり、フェルメール研究者の誰もが、その期間に描かれた作品があるはずだ、と考えていた。
その空白期間の作品と称して、ハンは贋作を作成した。
つまり、「相手が望んでいたウソをついた」のだ。

専門家が騙された最大の原因は、正にこの点をつかれたからだと思う。
だからこそ、普段なら行うはずのテストをすっ飛ばして、自分が望んでいた結論に飛びついてしまったのだろう。

恐ろしいのは、自分は「大発見」をしたのであって、短絡的な結論に飛びついた自覚がない、という点。

その後は、「あの専門家がお墨付きを与えた」という事実が引用を繰り返すうちに、「揺るぎない真実」になってしまう。
疑いを差し挟む声がないではなかったが、あまりに小さかったため、気付く人は、ほとんどいなかった。

こういう構図、どこかで聞いた事があるような・・・。

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