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早く人間になりたい 

人造人間 キカイダー(1巻~4巻)
  石ノ森章太郎
    秋田書店


キカイダーというと特撮ヒーローもの、という認識しかなかったが、これはその原作版。
登場人物の名前こそ一緒だが、ストーリーの方は大分、違っているらしい。

・・・というのは、特撮の方は個人的に特に思い入れのある作品、というわけではなかったので・・・。
興味をもったのは、原作版は「ピノキオ」をモチーフにしている、という話を聞いたからだった。

主人公のジロー(キカイダー)は、ロボット研究者の光明寺博士に作られたロボット。

光明寺博士はプロフェッサー・ギルという人物の援助を受け、他にもロボットを作り上げるが、プロフェッサー・ギルは実は悪人。
そのことを知った光明寺博士はジローに「良心回路」を取り付け、逃がす。

「良心回路」とは、悪い事をする命令には従わない事ができる回路。
ピノキオではコオロギのジミニー・クリケットがピノキオの「良心」役を任されたが、ジローにとっては、この回路がその役目を担う。
(良心回路は作中、"ジェミニ"とも呼ばれる)

ところが、この「良心回路(ジェミニ)」は不完全なもの。
プロフェッサー・ギルがロボットに指令を与える時、特殊な笛を使うが、その笛の音はジローにも影響を与えてしまう。

この「良心回路(ジェミニ)」のために、「良心」と「悪い心」の間で苦しむジロー。
しかも戦う相手は、ジローにとっては「兄弟」にあたるロボット。

自身の「悪い心」に逆らいながら、「兄弟」と戦わなければならない苦悩。
「良心回路(ジェミニ)」など無ければ、苦しむ必要もなかったのに・・・。

この苦悩が、ジローの戦闘形態にも現れる。

その姿は、左右非対称の上に、部分的にスケルトン。
これがジローの「不完全さ」を象徴している。
(別の所で、学校の理科室にある人体模型がモデル、とも聞いた事がある。)
人間の姿をしている時も、どこか哀しそう。

最初はジローもミツコ(光明寺博士の娘)も「良心回路(ジェミニ)」を完全なものにしようとするが、「絶対に悪い事をしない」と言える人間はいない以上、「良心」と「悪い心」の間で苦しむジローは、その状態が一番、人間に近いのでは?と思った。

・・・と思ったら、2巻でジローが、まさにその通りの事を言うシーンがあった。
「人間に近いロボットを"完全なロボット"と呼ぶなら、"不完全な"良心を持っていた方が人間らしい、と思う。」

ただ、この「良心回路(ジェミニ)」も、ジローの「兄弟」、ゴールデンバットに言わせれば、
「人間のために良い事をさせよう、という下心があるからじゃないか!」
という事になる。

ゴールデンバットは、さらに続けて言う。
「人間の持っている"良心"こそあてにならないくせに・・・!!」

中盤からジローの「兄」、イチロー(キカイダー01(ゼロワン))が登場するが、イチローには「良心回路(ジェミニ)」は取り付けられていない。
対して、ゴールデンバットはジローのものより、さらに不完全な「良心回路(ジェミニ)」が取り付けられていた。

彼も「良心」と「悪い心」の狭間で悩んだ過去があった事が語られるが、その点を考えると、ジローの「兄」は、イチローではなく、ゴールデンバットの方の気がする。
(ちなみにゴールデンバットの方は、「良心回路(ジェミニ)」があまりに不完全だったため、「悩み」はすぐに「解決」したらしい。)

ところで、本作品で最も印象的なのはラスト。

仲間のロボット共々、敵につかまったジローは「悪い心」である「服従回路(イエッサー)」を取り付けられてしまう。

が、そのために、今まで「良心回路(ジェミニ)」のせいで、できなかった事が、できるようになる。

それは、
「相手を騙す事」

「(自身に装備された)強力な武器の使用」

ジローは、この2つを用いて、「服従回路(イエッサー)」を取り付けられた、かつての仲間を破壊する。
それまで繊細だったジローが、かつての仲間をためらいなく破壊するシーンがショッキング。

そして、そのまま敵のボス、ハカイダーも破壊する。

その時のジローのセリフ
「俺はこれ(「良心回路」と「服従回路」を持ったこと)で、人間と同じになった・・・!!
 だが、それと引き換えに、これから永久に"悪"と"良心"の心の戦いに苦しめられるだろう。」

それは人間も同じだと思うが、ジローはロボットのため、「心の戦い」が半永久的に続く。
どこか哀しそうなジローの表情は、最初と変わらないが、その内に込められた哀しみは、さらに深くなったように見える。

繊細なジローが耐えられるのか・・・。
しかも「兄弟」は、もういない。

最後のナレーションが重い。
「ピノキオは人間になりました。
 メデタシ。メデタシ。

 ・・・だが、ピノキオは人間になって、本当に幸せになれたのでしょうか・・・?」

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カテゴリ: 石ノ森章太郎

テーマ: 読書感想 - ジャンル: 本・雑誌

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