小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

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並行宇宙いろいろ

隠れていた宇宙  上・下
 ブライアン・グリーン 著
 大田直子 訳
 竹内薫 監修


「並行宇宙」の事を扱った本、と言うと、SFが思い浮かぶだろうが、本書は物理学の一般向けの解説書。
「宇宙は、一つではないのではないか?」という話は聞いた事があるし、本も読んだ事がある。

本書でも他の宇宙が紹介されるが、それは一つではない。
この「一つではない」というのが、一番、驚いた。

紹介される宇宙は、
「パッチワークキルト多宇宙」
「インフレーション多宇宙」
「プレーン多宇宙」
「サイクリック多宇宙」
「ランドスケープ多宇宙」
「量子多宇宙」
「ホログラフィック多宇宙」
「シミュレーション多宇宙」
といったもの。

最後には、これらを全部ひっくるめた「究極の多宇宙」というものまで出てくる。
まるで、ヒーロー物のマンガ、アニメに時折、登場する「それまでの敵の能力を全て使える敵」のよう。

これらの多宇宙については、おそらく分かりやすい順で紹介されていると思う。
が、それであっても途中から、ちゃんと理解できているか、自信が持てなくなった。
ただし、本が難解だ、という訳ではなく、その説を支える考え方が、普段、あまり馴染みの無い考え方なので、とっつきにくいだけだと思う。

本書に登場する宇宙は、物理学の理論から、「そのような宇宙が存在してもおかしくない」という宇宙ばかり。
著者も言っているが、「これは本当に科学なのか?」という気がしないでもない。

それにしても、フィクションの専売特許だった「並行世界」が、物理学の研究対象になるとは・・・。

これらの内のどれか、または全て、もしくは、全く別の並行世界の存在が証明される日が、いつか来て欲しい。
例え直接、観測する事が不可能であるとしても。

健康に感謝

無菌病棟より愛をこめて
 加納朋子
  文春文庫


人気ミステリ作家、加納朋子。
体調が悪いので、病院通いを始めた結果、2010年6月7日、「急性白血病」と診断される。
そして、緊急入院。

本書は著者本人による闘病記。

恥ずかしながら、著者の作品は「モノレールねこ」しか読んだ事がないので、ネットで「ミステリ作家」と紹介されていても、個人的には「?」となるばかりだった。
(「モノレールねこ」はミステリではないので)

闘病記、というもの自体、ほとんど(というか全然)読んだ事がないので、重い内容かと思ったが、それほどでもない。
勝手に予想していた「悲壮感満載」というものではなかった。

ただし、軽い内容だけではなく、読むだけでも、痛くなりそうな部分もかなりある。
なんだか自分も体調が悪くなり、グッタリしてしまうのではないか、と思ってしまう時もあった。
が、どこか「柔らかい」のだ。
そういえば、「モノレールねこ」の時も同じような事を感じた。

化学療法を始めて、頭髪が抜け始めると、
・「ハゲ」という言葉は使用禁止
・「励む」「励み」は、ギリギリセーフ
・「励ます」は前後の文脈から、誤解を招かないか慎重な検討が必要
といった「ルール」を作ったりしている辺りは、噴きそうになった。

ただ、入院生活は決して、お気楽なものでなく、肉体的、精神的にツライ、という事も多々、書いてある。
いや、むしろツライ事の記述の方が多い。
だからこそ、少しでもユーモアを忘れたくなかったのだろう。

自分なら、あっという間に「イジケモード」に突入する自信がある。

ひとまず「健康」である事に感謝。
「予備群」だったり、小さな「故障」があるにしても。

副読本

ぼくらは「化学」のおかげで生きている
 齋藤勝裕
  実務教育出版



「本が好き!」(http://www.honzuki.jp/)より献本頂きました。感謝。

化学、というと縁遠い存在に思えるが、
「ポリ袋」
「液晶テレビ」
「太陽光パネル」
「香料」
は、化学のおかげ、と言えば、身近に感じるかもしれない。

本書では、どんな製品が、どのような化学の法則を利用しているか、化学が自分達の暮らしにどれだけ貢献しているか、を解説したもの。
化学の副読本、といった感じの内容。

化学の教科書では無味乾燥に説明されているが(それが当然だが)、本書では、日常生活で使ったり、目にしたりするものと化学を結びつけて解説している。
化学の知識がなくても、そんなに面食らうような事は無い入門的な内容になっているので、とっつきやすい。
が、反面、それ以上の内容も知りたい、という人には物足りないかもしれない。

ちなみに自分には、ちょうどいいくらいだった。
かつて、高校の頃、化学を選択したが、挫折した経験があるので、化学分野の本に関しては、「入門編」を何度も繰り返している・・・。

鵜呑みにしない

ニセ科学を10倍楽しむ本
 山本弘
  ちくま文庫


科学の衣をまとっているように見えて、その実、主張している内容はツッコミどころ満載。
そんなニセ科学を切りまくる、という内容。

ただし、「ニセ科学を10倍楽しむ」方法について、具体的には書かれていない。

俎上に上がるのは、
・水は字が読める
・血液型性格診断
・ゲーム脳
・有害食品
・2012年 地球は滅亡
・アポロは月に行ってない
など、ニセ科学の鉄板ネタから、「ニセ科学」というのは、ちょっと酷では、というものまである。

「2012年 地球は滅亡」(「人類」だったかも)は記憶に新しい。
(本書は、2010年3月に発売された楽工社の「ニセ科学を10倍楽しむ本」を2015年に文庫化したもの)
あの時、「滅亡」と騒いでいた人たちは、一体、どこに行ったのだろう?

それを言うなら、1999年のノストラダムスの大予言、なるものもそうだが・・・。

そして「アポロは月に行っていない」という話。
本書、最大の鉄板ネタ。
前から思っていたが、「アポロは月に行っていない」という話は、「説」ではなく「宗教」だと思う。

ところで、こういう本では、ニセ科学に対する「怒り」が感じられる事が多いのだが、本書では、不思議とそんな「怒り」は感じられない。
この辺りは、元「と学会」会長という経験の為せる技か。
著者は、トンデモ説は、今後も手を変え、品を変え(そして本質は変わらず)、現れてくるので、その時、どのように対処すべきか、という気持ちでいるようだ。
・・・というか、巻末に「ニセ科学にひっかからないための10か条」というものまである。

一言でまとめると「鵜呑みにしない」という事
ただ、なんでもかんでも鵜呑みにしない、という事はムリなので、自分にとって重要な事に関して、「疑う」姿勢を忘れない、という事だと思う。

ちなみに、最近、あった話を一つ。
「炭水化物はいらない」と主張する某医師。
主張がヘンなので、ネットで経歴を調べたら、専門は「形成外科」だった・・・。

形成外科だから、内科の事に関して、話をしてはいけない、などという事はないが、内科専門の医師より知識が少ない事は事実。
加えて、その主張の内容・・・。
(ちなみに専門分野では、立派な業績をあげている人ではある)

個人的には、意見が割れている件に対して、「●●だ!」と言い切る人は、その根拠に関して、疑ってかかるようにしている。
ついでに、主流とは異なる主張をしている人に対しても。

トンデモ説に対して、頭から肯定も否定もせず、理性的に調査しようと常々、言っていたカール・セーガン(1934年~1996年)も、その著作の中で、こう言っていた。
「尋常でない主張をするなら、尋常でない(量と質の)証拠が必要だ。」

バッキャロー

タリスマン(上・下)
 スティーヴン・キング&ピーター・ストラウヴ
  新潮文庫


主人公ジャックは12歳の少年。
数年前に父を亡くし、今は母と暮らしている。

だが、母は、はっきりとは言わないものの、死の病にとりつかれている。
さらに悪いことに、ジャックの父の会社の共同経営者であるモーガン・スロートは、この機に会社を独り占めにするため、ジャックの母を言いくるめて、書類にサインさせようとしつこくつきまとう。

そんなモーガンから逃れようと、母子は、アメリカ東海岸の保養地までやってくる。
母はジャックには詳しい事情を話さないため、ジャックの方は薄ぼんやりとした不安を抱え、毎日を過ごす。

そして、ある日、寂れた遊園地で、ジャックは謎めいた黒人スピーディと知り合う。

スピーディーが言うには、
この世界には、もう一つ、背中合わせに存在する世界「テリトリー」があり、そこは魔法が支配する世界。
一部の人は「テリトリー」に、もう1人の自分「分身者(ツイナー)」がいて、ジャックや、ジャックの両親もその1人である。

そして、ジャックの母は「テリトリー」の女王であり、やはり死の床に臥せっている、という。

「テリトリー」の女王を救う方法は、ただ一つ、「タリスマン」を手に入れること。
それはジャックの母を救うことにもなる。

ジャックは、2つの世界を行き来しながら、遥か西の土地(「テリトリー」では辺境の地))にあると言われる「タリスマン」を求める旅に出る。

行く手を阻むのは、ファンタジーでお約束のモンスターは勿論、欲深な居酒屋の店主、歪んだ信念に囚われた宗教者(というより狂信者)など、バリエーション豊か、というか、妙にリアル。
「タリスマン」自体も、その性質の一つに「純粋なもの」という側面があり、「純粋」なだけに「危険」でもあり、それゆえ厳重に閉じ込められている、という点が、個人的なお気に入りポイントの一つだった。

登場するキャラの中で好きだったのは狼男のウルフ。
(この「ウルフ」というのも、それが、この青年の名前であるか定かではない。「自分達の一族」という意味で、「ウルフ」と言っている節もある。)
成り行き上だったが、ジャックの旅の前半の相棒。

ウルフは、ホラーやファンタジーでおなじみの狼男一族で、言葉遣いや行動こそ、乱暴だが、その分を差し引くと、気のいい青年で、おとぎ話に出てくる、ドジな狼を連想させるところもある。

モーガンに追われて、やむなくだったが、ジャックは、自分の世界にウルフを連れてきてしまう。
「テリトリー」でも比較的田舎育ちのウルフに、現代社会は「悪臭」ばかり。
生まれて初めて見るものも、たくさんあり、ことあるごとにパニックに陥ってしまう。

ジャックは、そんなウルフを「お荷物」と思ってしまうが、自分が連れてきてしまった手前、決して口に出さない。
ウルフの方が何歳か年上だが、ジャックは、まるで出来の悪い弟を扱うかのように接する。

だが、ウルフは、その優れた嗅覚で、ジャックの気持ちを敏感に感じ取っていた。
ジャックが思っている以上に、ジャックの気持ちを理解していたのだ。

時たま、ジャックの役に立てる事があった時のウルフの喜びようは、いじらしい、とさえ感じる。
そして、そんなウルフの最大の、そして最後の見せ場は、物語前半のクライマックスでもあり、その結末は・・・。

しばらく、ウルフの、この口癖が頭にこびりついてしまった。
「バッキャロー」

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