小人閑居

「ベストセラー」より「知る人ぞ知る」といった本を紹介していきたいと思います。

Articles

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

弟子、師匠を語る

寺田寅彦  わが師の追想
  中谷宇吉郎
    講談社学術文庫


寺田寅彦は戦前の物理学者であり、随筆家であり、俳人であった人物。
夏目漱石の「吾輩は猫である」の水島寒月、「三四郎」の野々宮宗八のモデルとも言われている。

発想がユニークな人で、個人的にも好きな人物であった。
タイトルは忘れてしまったが、通勤ラッシュ時の電車でも確実に座れる方法の考察や、全く異なる言語の単語が発音も意味も同じになる確率の考察が書かれた随筆など、非常に面白かった。
それに「茶わんの湯」という随筆は、和製「ロウソクの科学」とでも呼ぶべきもので、引き込まれてしまった。

本書は、寺田寅彦の弟子、中谷宇吉郎による追想録。

著者の中谷宇吉郎は人工雪の研究で世界的に有名な人物。
「雪は天から送られた手紙である」という言葉は一度は聞いた事がある、という人が多いだろう。
この研究については、「雪」という本に詳しく書かれているので、割愛するが、この雪の研究自体、寺田寅彦の影響を多大に受けた結果とも言える。

本書は一部、二部で、寺田寅彦の人となりを現すようなエピソードが収録されていて、三部では、有名な「墨流しの研究」に関わる論文と、「物理学序説」(未完)のための、覚書が収録されている。

個人的な印象では、寺田寅彦、というと研究面では(悪い意味でなく)文人趣味的な研究テーマばかり扱っていた、という印象があったが、本書から見えてくるのは、最新の物理学を頭にいれた上で、そういった研究テーマを扱っていた、という姿。
大勢の前では小さくなってしまうそうだが、ほんの数人が相手であれば、「自分の研究は、どれも10年は先をいっている」と、気焔を上げる事もあったらしい。
(実際、その通りなのだが)

本書で何度か言及される「球皮事件」(軍から依頼された事故原因の調査の仕事)では、関係者が原因の候補さえ思い浮かばないうちに、事故原因の見当をつけ、検証の結果、まさにその通りだった、という事があった。
変な研究ばかりしている人ではなかった、と思う反面、一流の科学者である事の証、と誇らしく思えた。
・・・と、こんな偉そうな事を書いてしまうと、関係者に怒られてしまいそうだ。

一番、印象に残っているのは、「物理学序説」の部分。

使っている用語が難しく分かりにくいのだが、本書の解説に記載されている事の力も借りると、寺田寅彦は、この「物理学序説」で
「物理学は"分析"に偏りすぎている。
それでは細分化されるだけで、相互の関係が分からなくなる。

全体を見る人がいなければ、本来の意味での物理学、つまり"物の理(ことわり)"を扱う学問ではないのではないか」
という事を言いたかったらしい。

この言葉、物理学に限らず、今でも他の分野で通用する気がする。

身の丈ワイルドライフ

とりぱん 17
  とりのなん子
     講談社


「身の丈ワイルドライフ」を掲げたコミックエッセイ。
2005年から連載開始なので、今年で10年目に突入する。

面白い、と感じられない人には、全く伝わらないであろう「とりぱんワールド」は健在。
身の回りの事を描き続け、よくもこれだけ続くものだと思うが、作者自身が一番、そう思っているかもしれない。

表紙はカルガモ親子。
個人的にカルガモが好きなので、ようやく表紙を飾ったか、という思いが強い。
去年は公園でカルガモ親子の観察ができたが、今年は見られるだろうか。


閑話休題


他の巻もそうだが、自分の身の回りでも、よく見かける鳥をめぐる話がほとんど。
普段、気にしない鳥たちも、よく見ると、こんなドタバタが繰り広げられているかと思うと、日頃の見る目も違ってくる。

それがたとえカラスであっても。
いや、カラスは、カラスだからこそ面白い、と言うべきか。

鳥には「表情」がない、と言われる。
確かに顔の部分だけを見ると、「表情」はないが、その行動全体を見ると、実に表情豊か。

最近、鳥見をする機会が減ってきてしまっているが、また回数を増やしてみたい、と思う。

2014年に読んだ本

2014年に読んだ本をリストアップしてみました。

相変わらず、ジャンルがバラバラ。そして、流行りモノとは縁がありません。
絵本も読んだ、というのは今年が初めてになります。

こうして振り返ってみて、特に印象に残ったのは
「サードマン」
「謝るなら、いつでもおいで」
「23分間の奇跡」
「チリンのすず」
「ペットセマタリー」
といったところです。

さて、来年は、どんな本を読んでいくことになることやら。

新書
○に近い△を生きる
 鎌田 實   ポプラ新書

笑う科学イグ・ノーベル賞
 志村幸雄  PHPサイエンス・ワールド新書

荒木飛呂彦論
 加藤幹朗  ちくま新書

傭兵の二千年史
 菊池良生  講談社現代新書

検証 東日本大震災の流言・デマ
 荻上チキ  光文社新書

石巻災害医療の全記録
 石井 正  ブルーバックス

「闇学」入門
 中野 純  集英社新書

論理的に考え、書く力
 芳沢光雄  光文社新書

ウルトラマンが泣いている
 円谷英明  講談社現代新書

地球外生命 われわれは孤独か
 長沼毅、井田茂  岩波新書

ウルトラマンの愛した日本
 ウルトラマンタロウ 著、和智正喜 訳 宝島社新書

怪獣の名前はなぜガギグゲゴなのか
 黒川 伊保子  新潮新書

宇宙最大の爆発天体 ガンマ線バースト
 村上敏夫  ブルーバックス

「超常現象」を本気で科学する
 石川幹人  新潮新書

日本の軍歌
 辻田真佐憲  幻冬舎新書

ヒト、動物に会う コバヤシ教授の動物行動学
 小林朋道  新潮新書

単行本
どうぶつたちへのレクイエム
 児玉小枝  桜桃書房

謝るなら、いつでもおいで
 川名壮志  集英社

動物たちの不思議な事件簿
 ユージン・リンデン 羽田節子 訳  紀伊國屋書店

生協の白石さん
 白石昌則 講談社

ぼくは戦争は大きらい
 やなせたかし  小学館

文庫
フェルメールになれなかった男
 フランク・ウイン ちくま文庫

世界を変える日に
 ジェイン・ロジャーズ ハヤカワ文庫

23分間の奇跡
 ジェームズ・クラベル 著、青島幸男 訳  集英社文庫

ドリームキャッチャー (1~4)
 スティーヴン・キング  新潮文庫

ガニメデ支配
 フィリップ・K・ディック&レイ・ネルスン 創元SF文庫

恐怖の都・ロンドン
 スティーブ・ジョーンズ 著、友成純一 訳 ちくま文庫

サードマン  奇跡の生還へ導く人
 ジョン・ガイガー 著、伊豆原弓 訳  新潮文庫

9条どうでしょう
 内田樹、小山田隆、平川克美、町山智浩  ちくま文庫

遠野物語remix
 京極夏彦×柳田國男  角川文庫

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙
 河北新報社  文春文庫

ペット・セマタリー(上・下)
 スティーヴン・キング 著、深町眞理子 訳 文春文庫

震災画報
 宮武外骨  ちくま学芸文庫

内なる宇宙
 ジェイムズ・P・ホーガン  創元SF文庫

中谷宇吉郎 紀行集 アラスカの氷河
 渡辺興亜 編   岩波文庫

納豆に砂糖を入れますか? ニッポン食文化の境界線
 野瀬泰申  新潮文庫

風の帰る場所
 宮崎駿  文春ジブリ文庫

雑誌
ナショナルジオグラフィック
 2014年1月号~2014年12月号

マンガ
ARRMS 1~7
 皆川亮二 七月鏡一(原案協力)   小学館文庫

とりぱん 16
 とりのなん子 講談社

人造人間キカイダー(1~4)
 石ノ森章太郎  秋田書店

絵本
あらしのよるに
あるはれたひに
くものきれまに
きりのなかで
どしゃぶりのひに
ふぶきのあした
まんげつのよるに
しろいやみのはてで

 木村裕一 作、あべ弘士 絵  講談社

チリンのすず
 やなせたかし  フレーベル館


宇宙博2014 公式カタログ

同じ釜の飯を食う

ナショナルジオグラフィック
 2014年12月号


今年、シリーズ連載をしていた「90億人の食」も今回が最終回。

それに関連する記事で、わずか2ページの記事だが、「行き渡らない世界の食料」という記事が印象に残った。

世界で生産されている農産物をカロリーで換算して合計すれば、食料は十分足りているはず、という事になる。

が、現実は、その逆。
食料を消費者の所まで届ける道路や、食料を長期保存するインフラが整備されていなかったり、天災で破壊されてしまったりしているケースや、食料を買うだけの収入がないケースなど様々。

記事には栄養不足の人口比率が一目で分かる世界地図が載っている。
それを見ると、飢えている人の比率が高い地域が集中しているのはアフリカの諸国。
中には「データなし」という国さえある。

天災が原因であるなら、一時的なものと、なんとか納得もできるが、人為的要因(要するに政治家の都合による無策)には、やりきれなさを感じる。
国などというものは、そこに住む人がいなければ成り立たないのに、その人々を大事にできないのは、自分で自分の家の大黒柱にノコギリをいれているようなものとしか思えない。

ところで、「90億人の食」の連載の方は、今回は「"食べる"は喜び」がテーマ。
これまで重いテーマばかりだったのだが、最終回は一転して、明るいテーマの記事となっている。

「共に作り、共に食べる」という行為は、ただの準備と食事、という事以上の意味を持っている。

言われてみれば、これほど当たり前の事はない。
が、「あの店の○○がおいしい」「○×店の□□はイマイチ」とか言っていると忘れがちな事でもある。

「作る」というほどでもないが、大勢で鍋をつついていたりすると、その場限りだとしても、なんとなく仲間意識が芽生えたりする。
バーベキューなら、もっと顕著になるだろう。
(幹事はやりたくないが・・・)

サミットなどの時も、高級料理を並べるより、鍋かバーベキューでもやった後に話し合いをすれば、スムーズに進むのでは?という気がしないでもない。

早く人間になりたい

人造人間 キカイダー(1巻~4巻)
  石ノ森章太郎
    秋田書店


キカイダーというと特撮ヒーローもの、という認識しかなかったが、これはその原作版。
登場人物の名前こそ一緒だが、ストーリーの方は大分、違っているらしい。

・・・というのは、特撮の方は個人的に特に思い入れのある作品、というわけではなかったので・・・。
興味をもったのは、原作版は「ピノキオ」をモチーフにしている、という話を聞いたからだった。

主人公のジロー(キカイダー)は、ロボット研究者の光明寺博士に作られたロボット。

光明寺博士はプロフェッサー・ギルという人物の援助を受け、他にもロボットを作り上げるが、プロフェッサー・ギルは実は悪人。
そのことを知った光明寺博士はジローに「良心回路」を取り付け、逃がす。

「良心回路」とは、悪い事をする命令には従わない事ができる回路。
ピノキオではコオロギのジミニー・クリケットがピノキオの「良心」役を任されたが、ジローにとっては、この回路がその役目を担う。
(良心回路は作中、"ジェミニ"とも呼ばれる)

ところが、この「良心回路(ジェミニ)」は不完全なもの。
プロフェッサー・ギルがロボットに指令を与える時、特殊な笛を使うが、その笛の音はジローにも影響を与えてしまう。

この「良心回路(ジェミニ)」のために、「良心」と「悪い心」の間で苦しむジロー。
しかも戦う相手は、ジローにとっては「兄弟」にあたるロボット。

自身の「悪い心」に逆らいながら、「兄弟」と戦わなければならない苦悩。
「良心回路(ジェミニ)」など無ければ、苦しむ必要もなかったのに・・・。

この苦悩が、ジローの戦闘形態にも現れる。

その姿は、左右非対称の上に、部分的にスケルトン。
これがジローの「不完全さ」を象徴している。
(別の所で、学校の理科室にある人体模型がモデル、とも聞いた事がある。)
人間の姿をしている時も、どこか哀しそう。

最初はジローもミツコ(光明寺博士の娘)も「良心回路(ジェミニ)」を完全なものにしようとするが、「絶対に悪い事をしない」と言える人間はいない以上、「良心」と「悪い心」の間で苦しむジローは、その状態が一番、人間に近いのでは?と思った。

・・・と思ったら、2巻でジローが、まさにその通りの事を言うシーンがあった。
「人間に近いロボットを"完全なロボット"と呼ぶなら、"不完全な"良心を持っていた方が人間らしい、と思う。」

ただ、この「良心回路(ジェミニ)」も、ジローの「兄弟」、ゴールデンバットに言わせれば、
「人間のために良い事をさせよう、という下心があるからじゃないか!」
という事になる。

ゴールデンバットは、さらに続けて言う。
「人間の持っている"良心"こそあてにならないくせに・・・!!」

中盤からジローの「兄」、イチロー(キカイダー01(ゼロワン))が登場するが、イチローには「良心回路(ジェミニ)」は取り付けられていない。
対して、ゴールデンバットはジローのものより、さらに不完全な「良心回路(ジェミニ)」が取り付けられていた。

彼も「良心」と「悪い心」の狭間で悩んだ過去があった事が語られるが、その点を考えると、ジローの「兄」は、イチローではなく、ゴールデンバットの方の気がする。
(ちなみにゴールデンバットの方は、「良心回路(ジェミニ)」があまりに不完全だったため、「悩み」はすぐに「解決」したらしい。)

ところで、本作品で最も印象的なのはラスト。

仲間のロボット共々、敵につかまったジローは「悪い心」である「服従回路(イエッサー)」を取り付けられてしまう。

が、そのために、今まで「良心回路(ジェミニ)」のせいで、できなかった事が、できるようになる。

それは、
「相手を騙す事」

「(自身に装備された)強力な武器の使用」

ジローは、この2つを用いて、「服従回路(イエッサー)」を取り付けられた、かつての仲間を破壊する。
それまで繊細だったジローが、かつての仲間をためらいなく破壊するシーンがショッキング。

そして、そのまま敵のボス、ハカイダーも破壊する。

その時のジローのセリフ
「俺はこれ(「良心回路」と「服従回路」を持ったこと)で、人間と同じになった・・・!!
 だが、それと引き換えに、これから永久に"悪"と"良心"の心の戦いに苦しめられるだろう。」

それは人間も同じだと思うが、ジローはロボットのため、「心の戦い」が半永久的に続く。
どこか哀しそうなジローの表情は、最初と変わらないが、その内に込められた哀しみは、さらに深くなったように見える。

繊細なジローが耐えられるのか・・・。
しかも「兄弟」は、もういない。

最後のナレーションが重い。
「ピノキオは人間になりました。
 メデタシ。メデタシ。

 ・・・だが、ピノキオは人間になって、本当に幸せになれたのでしょうか・・・?」

Paging Navigation

Navigations, etc.

About This Website

/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。